政治家・橋下徹に興味はありません
外部から応募してきた区長は、地方公務員というよりは「首長」の意識が強いように感じる。全国から馳せ参じていることを考えれば、当然かもしれない。一方、市職員からの応募者は様子が異なる。
住之江区の高橋英樹区長は、前住吉区長。平松市政時代の市職員を対象にした区長公募に応じ、これまで住吉区政を担ってきた。今回も、住吉区での続投を希望して応募したが、1次面接の合格者がゼロとなった住之江区長に鞍替えさせられることになった。
住吉区と住之江区は隣接しており、合区ではそれぞれの住民がお互いを最優先の相手だと意識しているという。
「住吉と住之江をひっつけにいくんやね、とみんなにいわれます。はじめは書き間違えているんじゃないか、と思いましたが、いまでは納得しています」
公募区長は橋下市長らの面接で選ばれている。橋下市長は「行政と政治の分離」にたびたび言及しており、「区長は選挙で選ばれたわけではない。僕と同じやり方はできない」としている。その半面、区長らを「僕の分身」とも呼んでおり、政治的な面でも距離が近いようにみえる。
高橋区長は「政治家としての橋下さんには興味がない」と話す。
「父も祖父も公務員で、僕も骨の髄まで公務員なんです。公僕ですから、市民と市民の選んだ代表者に仕えます。政治家としての橋下さんには興味はありませんが、市民が選んだ橋下市長はしっかり支えなくてはいけない。それ以上でも、それ以下でもありません」
高橋区長は以前、市の行財政改革担当課長として「市政改革プラン」の立案に従事。この中で地域社会の活力を高めるために、NPOとの協働や住民自治の仕組みづくりなど、様々な施策に関わった。
「この手で協働を進めてみたい」というのが、区長公募に応じた動機だった。
区長の権限は予算面では15倍に広がっている。しかしその予算は、自由に使える「真水」ではない。予算は市のそれぞれの局に紐付いているので、「Aを削って、Bに振り分ける」ということはできず、「散発的な委譲」(高橋区長)に留まっている。それでも、高橋区長は「可能性は広がった」と話す。