大阪市による市職員への記名式調査で、約110人が入れ墨ありと回答したことが話題になった。民間企業では入れ墨社員に対してどのような対応が可能なのか。

橋下徹市長は当初、分限免職の可能性を示唆していた。分限免職は民間の普通解雇にあたるが、解雇にはそれ相応のハードルがある。「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法16条)。つまり「イメージが悪いから」「わが社の社員として相応しくないから」といった理由だけで解雇するのは不当。解雇はハードルが高いのだ。

どのような状況なら解雇が可能なのか。まず、入れ墨NGであることを採用時に明示していたかどうか。社会保険労務士の横井祐氏は、こう解説する。

「一般的に入れ墨は、反社会的勢力との関わりをにおわせるものとして受け止められています。採用の過程で『入れ墨はお断り』と明示したにもかかわらず入社後に発覚したのであれば、解雇が認められる可能性はあります。場合によっては、虚偽申告したとして懲戒解雇が認められる可能性もゼロではない。また、採用段階で、反社会的勢力との関わりや、関わりをにおわせるような行為からの徹底的な断絶方針を明示していれば、入れ墨社員はお断り、という点についても明示があったと解釈できると考えられます」

業務上支障があるかどうかも、判断材料の一つになる。たとえば接客業でお客さんからクレームが相次ぐようなケースだ。

仮に業務に支障が出ていても、直ちに解雇することは難しい。入れ墨が見えない服装を指導したり、配置転換することもできる。そういったプロセスを飛ばしていきなりクビを切れば、不当な解雇とみなされる恐れがある。逆にいうと、適切なプロセスを踏んだうえでもなお改善が見られなければ、解雇が認められる可能性は高くなる。