選挙におけるオンライン投票の導入はなぜ進まないのか。社会学者の西田亮介さんは「オンライン投票を実現するには、不正投票の防止や安定したシステム運用が必要になる。多大なコストをかけなければ、一定のレベルの選挙ガバナンスを維持できない」という――。
※本稿は、西田亮介、安田洋祐『日本の未来、本当に大丈夫なんですか会議 経済学×社会学で社会課題を解決する』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
オンライン投票はなぜ解禁されないのか
投票行動、投票率の低下について考えるといったときに、「オンライン投票を解禁すればいい」という議論になりがちです。ITにくわしいという与野党の議員の人たちも、マイナンバーカードを使えばオンライン投票は全然大丈夫だといいます。
しかし、ぼくはリスクがいろいろな形で存在すると考えます。
選挙管理、選挙ガバナンスという分野があって、日本の選挙ガバナンスはかなり厳格だと考えられています。投票所の管理などもそうですし、次の選挙まで紙の票を残しておくとかもそうです。厳封して保管しておいて、もし不正があったら箱を出してきてもう1回見るわけですね。
実際、筆跡が同じような投票用紙がたくさんあって投票不正が露呈したことがありました。それができるのも厳封して紙で残しておいて、不正利用の際にはもう1度開くからです。