各所でシステムダウンが続く社会で安定した運営ができるか

3つ目は運営コストの問題です。いま、投票所などのコストは選挙管理委員会がすごく分散化していて負担しています。要するに都道府県が負担しているんですね。

では、オンライン投票のシステムは誰がコストを負担して設置するのか。

たとえば各都道府県がこうした仕組みをばらばらに用意するとは考えにくい。だから国が行なうと考えるほかありません。そもそもシステムを整備するのに、ものすごいコストがかかります。第一、システムダウンしてはいけないわけです。

だけど最近の日本のシステムはすぐダウンします。新型コロナの特定定額給付金のシステムもろくに使えませんでした。マイナンバーのシステムがほかの人の番号を出すとか、こういうことは、いまの基準における電子投票システムでは決して起きてはいけないわけです。

それに投票日に多分アクセスが集中します。それでもダウンしてはいけません。

そんなシステムを作れるのかということです。

都道府県からすれば、ただでさえ財政難なのに、こんなシステムはとても作れないから国がやってくださいということになるでしょう。実現できそうでしょうかね。

「マイナンバーカードがあればできる」ということをDX推進派の国会議員やネット選挙にくわしいと名乗る人もかなり簡単に言いますが、ぼくは懐疑的です。

また、頑張ってこのシステムを仮に導入したとしてランニングのコストもかかります。

オンライン投票には経済的メリットがない

これらを総合的に見て、いま選挙管理にかかっているコストを引き下げられるでしょうか。多分ムリで、経済的にはあまりメリットがなさそうです。

これらを踏まえると、オンライン投票は実現が難しそうであることにくわえて、あまり実質がなく、アナログで残しておくのも致し方ないのではないでしょうか。

投票所で投票用紙を投じる人の手
写真=iStock.com/bizoo_n
※写真はイメージです

もう1つは、逆にいまの選挙ガバナンスの規範をゆるめるという考え方はあり得るかもしれません。こんなに厳格な選挙管理は必要ないということであれば、オンライン投票もあり得るかもしれません。不正を防ぐために投票立会人がいて、開票時には開票立会人がいます。それを別にいなくてもいいよと考えるのであれば可能です。

それから前述した、分散して生じうるような投票不正、宗教団体が人を集めて投票させるようなものについてリスクを無視するのであれば、オンライン投票を受け入れられるでしょう。とはいえ、前述の理由からあんまりよさそうな感じはしません。