世界的に見ても先進国での導入事例はごくわずか

ちなみに、日本で選挙制度の改革は基本的に政党で議論して決めます。政党の合意で決めていくことで、政治マターだと考えられています。

ですから、選挙を所掌する総務省は選挙制度の改革について積極的には提案しません。

電子投票も含めて規制改革の文脈でときどき議論が出てきていますが、総務省では近年議論していないので、実務的な検討はほとんどされてないのが現状です。

また、先進国でオンライン投票を導入した国もほとんどありません。そんななかエストニアは電子投票を行なっていますが、それでも期日前投票だけです。ほかにもブラジルなどの地方選挙で行なわれているものの、アメリカや欧州の国政選挙での実施例はほとんどありません。

機械式投票機をめぐって起きたトラブル

日本ではオンライン投票のはるか手前で、機械式投票が検討されたことはあります。法律上は、地方選挙に限って、ボタン式の投票機の導入が2000年代にできるようになっています。制度上はいまもできます。

西田亮介、安田洋祐『日本の未来、本当に大丈夫なんですか会議 経済学×社会学で社会課題を解決する』(日本実業出版社)
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でも、ほとんどの方は見たことないはずです。なぜ広まらないかというと、2003年に岐阜県可児市の市議選で機械式投票機を導入しましたが、当日機械が不具合を起こしました。

その結果どうなったかというと、最高裁まで行って選挙無効になりました。投票機が不具合で選挙無効。そんなリスキーなことをやりたくないということになって、制度としてはいまもできるのですが、導入する自治体はその後ほとんど出ませんでした。

しかも、機械式投票機は当然ですが、いろいろなスペックが決まってるわけです。これを作っていた唯一の会社が生産を終了してしまって、いまは機械式投票マシンを製造する業者が日本に存在しないので、事実上、機械式投票はできないという少しおもしろい話があります。

【安田】
ここまでのお話を踏まえると、投票所はある意味安心して投票できる環境を作っているわけですね。いまの選挙の仕組みを我々は当たり前だと思っているから特殊な感じはしないですが、実は結構スゴいことということですね。
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