性加害の連鎖を断ち切るためにひとりひとりができること
人はそれぞれの性の価値観や嗜好性を持っていて、それらに影響されて問題行動をとる人もいるし、とらない人もいる。問題行動をとったにしても単に性的欲求だけで起こしたものはほとんどない。ですから、問題行動をとる人に対して厳罰化する、あるいは薬物を投与することで解決させようといった短絡的で乱暴な議論をするのではなく家族のコミュニケーションをはじめ、地域資源の充実など、どうすれば犯罪を防げる社会をつくることができるかという議論にシフトすることが大切です。
個人レベルのあり方も一度考えてみる意味は大きいでしょう。性被害体験から性加害化という現象は、そもそも加害者の一部にしか認められるものではないのですが、先に「被害を受けた人も早期に支援が受けられたら加害化を予防できる」と述べました。早期の支援は被害者の訴えに耳を傾けることから始まります。つまり次の連鎖を防ぐための受け皿はひとりひとりの考えや態度によってできあがっていくものだと思います。
参考文献
(※1)Conte, J. R. (1985). The effects of sexual abuse on children: A critique and suggestions for future research. Victimology, 10, 110-130.
Gilgun, J. (1991). Resilience and the intergenerational transmission of child sexual abuse. Patton MQ (eds.). Family sexual abuse. Pp. 93-105. Sage, Newbury Park, CA.
(※2)Briggs, F. (2021). From victim to offender: How child sexual abuse victims become offenders. Routledge.