──中国でのEVに関しては、どう展開するのか。

ゴーン 中国政府はEVとPHVを合わせて、2020年までに累計500万台普及させる計画を発表しました。技術を持つ日産としては、政策に則って先んじてEVを展開していきます。合弁会社の東風汽車でEVを生産し、「ヴェヌーシア」ブランドで投入していく計画です。中国に限らず、お客様にEVを理解してもらい売っていくためには、これからはマーケティングが大切。さらに、新技術の導入段階なだけに、新しい技術を自分たちがコントロールしていけることが、特に重要になります。

──EVはガソリン車と比べ、発進や加速など走行性能に優れている。スポーツカーは出さないのか。

ゴーン まだです。需要が集中するファミリータイプの街乗り車を積極的に出していく。小型乗用車も投入します。ただし、長期的にはEVはラインアップを広げます。

──日産は電池メーカーでもある。日産が主導し、電池を標準化していく考えはあるのか。

ゴーン 日産はEVを成功させるために、電池メーカーになったのです。私の最大の願いは、EV用電池メーカーが増え、競争力を上げてもらうこと。そうすれば、日産はEV事業に集中できますから。また、電池の標準化は考えていません。最終ユーザーにメリットがあるかどうかで、私は判断します。電池はこれからも、高容量化、軽量化、コスト削減などで、進化し続けますし。

──ダットサンの展開は?

ゴーン 低価格車のブランドです。日産ブランドを傷つけないために、立ち上げました。低価格車は世界市場の3割から4割を占め、ここに参入を決めたのです。

──グローバル化は待ったなしだが、これから日本人はどうあるべきか。

ゴーン グローバルに活躍するためには、出身地や家族のルーツといった強固なアイデンティティーが人間の基盤となります。それがなければ海外になど怖くて出ていけません。若い日本人は、アイデンティティーを持ち、ネットを通して世界をよく知っている。特に日産の若い社員たちは、日産が日本企業でありながら、世界市場で大きな役割を果たそうとしていることを、十分理解していると私は信じています。大きな役割とは、新興国への産業貢献であり、世界的な脱石油への挑戦です。

※すべて雑誌掲載当時

日産自動車会長兼CEO 
カルロス・ゴーン

1954年、ブラジル生まれ。78年、仏・国立高等鉱業学校卒業後、ミシュラン入社。ブラジルミシュラン社長、北米ミシュランの会長、社長、CEOなどを経て96年ルノー入社。99年日産COO、2000年より社長に就任。
(永井 隆=構成 的野弘路=撮影)
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