電池材料の調達もすでに手を打っている

――電池材料の調達ではどのような手を打っていますか。

公には発表していませんが、世界の採掘大手と仲介を通さず、直に契約を結びました。地中から原材料を掘り出す業者との関係構築はコストの削減につながります。また、サプライチェーンの状況によらずにその素材を確保できる利点もあります。

――高級な車種はEVシフトに伴うコストを価格に反映しやすいかもしれませんが、大衆向けのEVは価格転嫁が難しいのが現状です。

モバイル業界でフィーチャーフォン(従来型携帯電話)からスマートフォンへの転換が起こった時、私はその中心にいました。ノキアやモトローラ、ソニー・エリクソンなどが他のメーカーに地位を奪われることなど、それまでは考えられないことでした。

写真=iStock.com/madsci
※写真はイメージです

スマホへの転換の主役はソフトだった

スマホへの転換で主役となったのは、ハードウエアではありません。iOSとアンドロイドという2つのソフトウエアのプラットフォームでした。スマホへの転換のような大きな変化が現在、自動車業界でも起きていると考えると、最も重要なのはソフトウエアと半導体でしょう。

大事なのは、こうした転換はスピードが急激に上がることです。変曲点に到達すると、業界全体が新技術に突然傾倒するようになるのです。

私はエンジニアなので、その現象を物理的、エンジニア的な観点から考えます。まず、内燃エンジンのエネルギー利用効率は35~38%とされます。6割強のエネルギーが音や振動、熱として表れるわけです。一方、駆動用モーターの効率は93%です。モーターの場合は実際に使う前の発電や電力変換などで失われるエネルギーもあるので直接の比較は難しいのですが、最終的にはモーターがエンジンに勝ると私は考えています。

ただ、そうした変化を遅らせる理由がいくつかあります。それを私は「摩擦因子」と呼んでいます。摩擦因子を無視できる状態になるのが、先ほど言った変曲点なのです。