電気駆動システムの自社開発に投資
――ボルボはグーグルやアップルといったテック企業と提携しています。そうした大企業と組む中で、ボルボのブランドの独自性をどのように保つのですか。
それは、私がボルボで働き始めてから多くの時間を費やしてきたことです。何を自社で製造し、何を市場から購入するのかという決断に関しては規定をつくり、それに沿うようにしてきました。インフォテインメント(情報と娯楽)システムの基盤として採用したクアルコムのプロセッサーは、多くのスマートフォンで使われている非常に優れたものです。
そして、コアコンピューターの分野では計算能力の面でエヌビディアが業界をけん引する存在だと見られています。こうしたチップセットを自社で開発する必要はないというのがボルボの判断です。それが良い投資になるとは考えていません。
私たちが投資に力を入れたいのは、電気駆動システムです。自社でモーターやインバーター、電池、ソフトウエアを開発します。インバーターなどを構成する内部の部品について、新しい素材を検討することもあります。例えばパワー半導体の材料をSiC(炭化ケイ素)などにすれば、インタバーターの性能を高められます。そうした価値を生み出せる分野に重点的に投資しています。
違いを生み出す技術に焦点を当てる
アップルも同じことをしてきました。自社で開発するものと、外注するものを見極めていたのです。初期のアップルはチップセットを外注していましたが、現在は自社で開発しています。ボルボも、違いを生み出すと信じている技術に焦点を当てる一方、業界でより普及していて安いものは外注します。
単に高度な技術でなく、車をより安全にする技術や、より高い利便性を顧客に提供する技術が大事です。サステナブルな素材と製造方法の選択も重要でしょう。顧客は真にサステナブルかどうかを見極めて選択しているからです。そして、北欧のデザインも重要です。
――電池に関しては、どんな投資計画がありますか。
最初の電池工場はスウェーデンに造ります。自社製造でコストを削減できるだけでなく、アジアからの電池の輸送で発生する大量のCO2も減らせます。(スウェーデンの新興電池メーカーである)ノースボルトとは研究開発の合弁会社をつくり、生産と技術という2つの側面で提携しています。
そして、サプライヤーによる電池も使用します。100%を自社の電池にするわけではありません。ノースボルトの電池を中国に輸送するのではなく、中国内の企業とのパートナーシップを維持して、彼らの電池を使うことになるでしょう。4社の異なる電池サプライヤーと提携していますが、そのほとんどと関係を継続することになると思います。