「市民よりも難民を優先しているのか!」

さて、増え続ける難民は教育の場だけでなく、社会のあらゆる場所で困難を引き起こしている。昨年は24.4万人が難民申請をし、その他別途にウクライナからの避難民が105万人。庇護を押し付けられた自治体ではありとあらゆる場所を宿舎にして、衣食住、教育、医療、お小遣いまで、一切合切の面倒を見ており、受け入れ能力はとっくに限界を超えている。

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腹に据えかねた州政府が中央政府に対して何度も抗議の声を上げているが、社民党の内相も緑の党の外相も、人道をうたうばかりで、自国の国境防衛には消極的だ。

しかし、難民にかかる費用の原資は市民が収めた税金であり、しかも、難民の受け取る額は、子沢山の場合など、ともすれば低賃金で働いている市民よりも多くなる。多くの難民がドイツを目指してくるのは、この潤沢な補助のためであることは、すでに広く知られており、当然、国民の不満は大きい。

ベルリンでは先月、128戸の集合住宅の棟上げ式が行われたが、これが難民専用と発表され、皆が唖然。ベルリンは、そうでなくても住居の確保が非常に難しい都市の一つなのに、「政治家は、市民よりも難民を優先しているのか!」と怒りの声が渦巻いている。

また、難民申請者は若い男性がほとんどなので、暴行や犯罪の急増という、経済以外の問題も山積みだ。多くの難民施設では、音を上げた職員が辞めていき、制御不能になりつつあるというから、住民としては不安材料が尽きない。

首相は多弁でありながら何も答えない

では、ショルツ首相はこれらの事象をどう見ているのか?

毎年、国会が閉会し、政治家が夏のバカンスに出かけてしまう前後に、第1テレビと第2テレビが、各党首の独占インタビューを行う。8月13日には第2テレビがショルツ首相のインタビューを放映したが、氏は終始一貫、沼の中の軟体動物のようなヌルヌルと掴みどころのない態度で質問をかわし、多弁でありながら、結局、何にも答えなかった。

ショルツ氏には以前より、「ショルツ」と「アウトマート(自動の機械)」を合成させた「ショルツォマート」という新造語のニックネームが付いている。この日もショルツォマートは曖昧な笑みを浮かべたまま、穏やかに、ドイツの抱える問題のすべてを矮小わいしょう化した。抑揚を抑え、将来には一点の曇りもないかのように主張するその姿は、確かに機械のようだ。

例えば、「政府が信じられないほどのテンポで枠組みを整えた」ので、「再エネ増産の道筋がつき、良い未来が待っている」と太鼓判を押し、輸出の減少については、「輸出が振るわないのは、買ってくれていた国の景気が悪化したせい」なので、「われわれに必要なのは問題を解決すること」だそうだ。