過度に心配しなくても大丈夫
それでも「うちの子は他の子に比べて怒りっぽい」と心配になる親御さんもおられるかもしれません。でも、怒りは子どもにとってありふれたものであり、心の成長に必要な感情です。子どもは感情をぶつけ、それを親に受容されることで、他者や社会への信頼感を育んでいくのです。
なかには、自分が子どもの思いに十分に応えていないから、子どもが怒ってばかりなんだと思う養育者もいるかもしれません。しかし、自分の子育てに問題があるとか、適切な対応ができていなかったんじゃないかと思い悩んでも事態は変わらないのです。怒りを心のうちにとどめる力が、まだ子どもには足りないだけかもしれません。むしろ、子どもが親に対して素直に怒りをぶつけられない状況のほうが、信頼関係を育んだり、受容されたりする機会を失っているとさえ考えられます。
たとえ一見ずっと怒ってばかりのように見えても、子どもはそれぞれ着実に成長し、その段階ごとの課題に直面しています。成長とともに、怒りの感情が発生する原因も複雑になっています。それは子どもの属する世界が広がっている結果で、ある意味では喜ばしいことでもあるのです。
年齢とともに形を変える「怒り」
子どもは、年齢ごとに怒りの表現が変わります。幼い頃は「おもちゃ買って」などと癇癪を起こしますが、それは怒りというよりコミュニケーションの一手段。小学校の中学年から高学年になると、真正面から怒りを表すことが増えてきます。中学生以降になると、現実への不安や不満、怒りが内在化するようになり、怒りが怒りのまま素直に出るというより、不機嫌や口をきかないという形に表現方法も変わってくることが多いでしょう。
子どもが怒ってばかりいることを不安に思うのではなく、その子の怒りの理由を踏まえて寄り添い、それぞれの成長段階で直面している問題に対して、サポートをするという視点で関わってみるのもいいかもしれません。
もちろん、親御さんも仕事や家事に忙しく、ご自身のことでもすでに大変ですから、怒っている子どもに怒り返してしまうことはあるでしょう。そのことで「保護者失格だ」なんて思う必要はありません。多くの子育て中の家庭で、それはありふれた光景です。怒ってしまったからといって、大切な人との関係性は直ちに崩れたりしません。大切なのは、その後のフォローです。お互いに感情を受容しあうことで、関係性は深まっていきます。