親失格なのではなく助けが必要

ただ、親だけが子どもに対し、一方的で強い怒りを日常的にぶつけていると、子どもはおびえて、次第に自分の感情を親に伝えなくなっていきます。そうすると、自分の不安や緊張を親が支えてくれるというバランスが崩れてしまう。親から受容され、子どもの心が育っていくという機会が失われてしまいます。

気がつけば、養育者自身が怒りの気持ちをコントロールできなくなり、激しく子どもをなじっていたり、手を上げてしまっていたりということもあるかもしれません。自分の子育てが、もはや虐待なのではないかと心配になることもあるでしょう。子育て中は、得てして孤独になりがちなものです。そうして、どんどん悪循環に陥っていくことがあります。そういうときは、養育者自身が心のゆとりを取り戻すこと、子育てについて一緒に考えていける相談者や相談機関を持つことが大切なのです。

第三者機関は、幼稚園や保育所、学校、子育て支援センター、かかりつけの小児科、児童精神科など、親御さんご自身が行きやすいところからスタートすればいいと思います。そこには必ず専門家がいて、状況に応じて、子どもの支援を一緒に考えてくれます。

子育ての難易度はそれぞれに違う

子育てというのは、みな等しく同じではありません。子育ての大変さは、人によって全然違います。例えば発達障害のある子どもを育てている親御さんは、「どうしてうちの子はこうなの? 自分の育児はどうしてうまくいかないの?」と自問自答しながら、苦しんでおられることが多いものです。

また現代は、昔のように子どもを何人も育てている家庭は少ないので、比較対象がなく客観的な目で見ることができません。でも、じつは人一倍大変な、難易度の高い子育てをしている可能性もあります。子育て失格なのではなく、難しい子育てに取り組んでいる、実はがんばりやさんかもしれません。しかし、ときに「うまくできてあたりまえ」にされてしまう子育て。その大変さを本当に理解して、ほめてくれる人はなかなかいないものです。

さまざまなことがわからないまま、一人きりで右往左往するのは苦しいこと。今の状況を専門家と一緒に確認することで、親御さんの心にも余裕が生まれ、お子さんにとって必要なサポートを前向きに考えられるようになると思いますよ。

(聞き手=沖本敦子)
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