新曲に込めたメッセージ
現在は、今春アメリカで発売された30枚目のアルバム『EUPHORIA』を携えて、アメリカをツアー中。びっしり詰まったスケジュールの間を縫うように、6月28日の日本盤発売に合わせて帰国。大阪や東京などでもライブも行った。
『EUPHORIA』の日本盤のライナーノーツには「このアルバムを、私たち人類の新たな時代と地球に捧げます。Love & light, Keiko」と記されている。その真意を聞いてみた。
「私たちは新しい時代の入口に立っているということ。人類が体験したパンデミックは、命の尊さや儚さを教えてくれました。友人、知人が亡くなるなど、つらいこともあったけど、大切な人と過ごす時間のありがたさや、生かされていることの意味を考える、貴重な機会になったと思います。だけど、相変わらず人間は、分断や、戦争など、悲しいことを繰り返している。ほんとうに愚かですよね。でも、人間は、それを乗り越えて前に進もうとする強さや勇気を持っているはず……。地球はもっといい方向に進める。もういい加減に、お互いを傷つけ合うのはやめようよ――そんなメッセージを込めました」
録音のためにスタジオに入ると、曲に導かれているような感覚があったという。
「この音楽を世に送り出すために私たちは働いている。そう感じたんです」
ポジティブな言葉を伝え続ける理由
コンサートでも、同様のポジティブなメッセージを伝えているという。
「私たちそれぞれが自分の幸せや心身の健康を追求しながら、お互いを思いやって、支え合って生きていく。I hopeでもI wishでもない。愛と勇気があればできると私は信じているから! ――英語でそう言うと、アメリカでは『そうだ‼』という力強いリアクションがあって、拍手が巻き起こります。みなさんが共感してくれているのが伝わってきますね」
アルバムのなかの唯一のボーカル曲、グラミー賞シンガー、レイラ・ハサウェイが歌う『LOVE AND NOTHING LESS』にも、そんな思いが込められている。哀愁を帯びたラブソングのように聞こえるが、その裏に深い意味があるのだ。
「この曲は絶対にレイラに歌ってほしい、彼女しかいない! と直感したんです。詞も書いてほしいとお願いしたら、私の想いやエモーションを汲み取った、ぴったりの歌詞を書いてくれました。彼女自身も平和を願う音楽家です。女性差別や人種差別など、つらい経験もしてきたはずですが、勇気と愛があれば世界は変えられると信じているのでしょう。だから私の考えに共鳴してくれたのだと思います」
人生が生きるに値するならば、喜びも痛みも、すべて抱えて、愛とともに生きてゆこう。この曲の歌詞は、慶子さんの生き方にも通じるようだ。