日本企業は軍隊式マネジメントと相性がいい

「ホウレンソウ」はやればやるほど、組織を管理主義に傾倒させる。そんな負のスパイラルに拍車をかけていたのが「LINE業務連絡」だった、というのが筆者の考えだ。

なんて話をすると、「ホウレンソウを否定するな! わが社はホウレンソウで大きく成長して社員もみんなハッピーだぞ」と不愉快になる人も多いだろう。確かに、海外ではアレルギーのある「ホウレソウ」だが、日本企業ではうまくフィットして、組織の活性化に貢献している側面があることは、事実だろう。

ただ、これにもちゃんと理由がある。日本企業が「ホウレンソウ」と相性がいいのは、海外の企業と違って、組織マネジメント手法のルーツが「軍隊」にあるからだ。

ご存じの方もいらっしゃるかもしれないが、年功序列、定期異動、定時出社、上司の命令は絶対など、多くの日本人が「日本企業特有の文化」と信じていることのほとんどは、戦時体制下に軍隊の指導によって社会に定着したものだ。

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連綿と受け継がれてきた「産業戦士」の働き方

当時、国民総動員体制下で、総力戦をしていた日本では、「民間企業は生産性を上げるために軍隊の優れた組織マネジメントを導入せよ」というお達しが出た。実際に軍隊から指導員がきた。彼らのもとで軍隊式の働き方改革を受けた民間人は「産業戦士」と呼ばれた。

戦後も基本的には、同じことが繰り返されている。

焼け野原から経済復興を経験した人のほとんどが、軍隊で復員した経験のある人や「産業戦士」なので当然、戦後のベビーブーマーたちに「軍隊式の働き方」を叩き込んだ。そうして、「産業戦士2世」となった人々が次の世代にも継承する、という感じで「軍隊式の働き方」の世代間連鎖が続いた結果が、現在の日本企業である。

だから、令和の今も、日本の労働者は、旧海軍で導入されていた「5分前行動」を当たり前に続けている。そして、われわれが世界の常識と信じ込んでいる「ホウレンソウ」も、実はそんな日本軍式マネジメントのひとつなのだ。