6000人の従業員を抱える社会的責任は大きい

次から次へと表面化する不正疑惑で、ビッグモーターの経営はどうなっていくのか。非上場企業とはいえ、6000人の従業員を抱える社会的責任は大きい。元社員らの証言が相次いで報道され、世の中の関心が高まったことで、ついに監督権限を持つ省庁も調査に乗り出した。

国土交通省は7月26日に社長に就任したばかりの和泉伸二氏から事情聴取を行ったものの、実態把握が必要と判断し、7月28日に全国24都道府県の34事業場へ一斉に立ち入り検査した。また、金融庁も同日、関東財務局を通じてビッグモーター役員に保険代理店業務について任意の聴取を実施。7月31日にはビッグモーターと損害保険ジャパンなど損保会社7社に対して、保険業法に基づく報告徴求命令を出した。

整備工場ででジャッキアップされている車体
写真=iStock.com/fzant
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国交省の立ち入り検査は、整備料金の不当請求などを禁じる道路運送車両法に基づいたもので、自動車整備工場への立ち入り検査としては過去に例を見ない規模で行われた。今回の立ち入り先だけでなく、ビッグモーターの整備関係135事業場すべてについて、法令違反がないか自ら調べて報告するようビッグモーターに指示したという。

損保会社の「関与」にも調査対象が広がっている

疑われているように、修理の際に故意に傷を付けたり、車検の際に不必要な部品交換をするなど悪質な不正が恒常的かつ組織的に行われていたということになると、国交省が民間車検場としての「指定自動車整備事業」の指定取り消しや、車検業務の停止といった行政処分に踏み切る可能性が高い。これまでも個別の整備工場が指定取り消しや業務停止を受けているが、会社全体に処分対象が広がる可能性もある。

また、修理代金の水増しによる保険金の不正請求に関しては、ビッグモーターだけでなく、同社と関係が深かった損害保険ジャパンなど損保会社の「関与」にも調査対象が広がっている。ビッグモーターが保険代理店としての許認可を取り消される可能性があるほか、損保大手にも行政処分が及ぶ可能性がある。事故が起きた際、損保大手はビッグモーターの修理工場を紹介するなどして、修理が必要な事故車両を斡旋、それに応じて自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の契約をビッグモーターが割り当てていたとされる。

損保ジャパンからはビッグモーターに出向者を出しており、修理の不正などを知っていた「連携関係」にあったのではないかという疑いが出ている。もともと保険大手と修理を行うビッグモーターは「利益相反」関係にあるのに、そこに大量の出向者を出していたことの適正性などについても金融庁は厳しく調べている。