「社風」を一掃できない限り不正は繰り返される

今、ビッグモーターに向けられている消費者の不信感は「経営スタイル」そのものだ。業績を上げるためには顧客を騙すようなやり方も許される、経営トップが直接「不正をやれ」と指示したわけではないかもしれないが、数字を上げるためには不正も許される、数字を作らねば罵詈ばり雑言を浴び、降格され、会社を追われる、という「社風」、「空気」が蔓延していたのだろう。そうした「社風」を一掃できない限り、同じような不正が繰り返され、世の中の信頼を根本から失うことになる。

店舗の前の街路樹に除草剤をまいて枯らせていたのではないか、という疑惑も広がっている。これは顧客を巻き込んだ不正とは次元の違う事件だが、明らかにビッグモーターの「社風」を示している。店舗前に「雑草」があれば怒鳴られ、減点され、降格される。店長にとっては街路樹も「雑草」に見えてくるのだろう。「除草剤をまけば雑草はなくなる」という“知恵”が店長たちの間に広がり、それが犯罪行為だという感性を麻痺させたのだろう。

コンクリートブロックの境目から懸命に生える草
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「悪しき社風」は簡単には消えてなくならない

経営者は「除草剤をまけと言ったことはない」と言うだろう。おそらくそれは嘘ではない。だが、結果的に除草剤をまくのが当たり前になっていった。それがビッグモーターに巣食った「悪しき社風」である。そうした犯罪行為も厭わなくなる会社の空気は、粉飾決算や様々な検査不正が発覚した日本の有名企業にも共通していた。その「社風」や「空気」を完全に払拭するのは、実は至難の業である。一度根付いた「悪しき社風」は経営者が口で言っても簡単には消えてなくならない。多少の数字合わせや不正は許されるというカルチャーが残ってしまうのだ。

ビッグモーターはどうやってそれを一掃していくのか。6000人を抱える巨大企業に育てた兼重氏の手腕は評価すべきものがあったのだろう。だが、その成長を達成するために、本来は許されないはずの不正を許す風土が生じた。かつて「向う傷は問わない」と言った銀行経営者がいたが、まさに同じである。