ホウレンソウは「働かされている」象徴

社会人になるのと同時に研修などで「ホウレンソウしなさい」と叩き込まれるせいで、日本人の多くは「ホウレンソウ=良いこと」という刷り込みがなされているが、実は世界的にみると、これはかなり「異常なマネジメント」だ。

海外赴任をした方ならばわかるだろうが、現地で採用した人に「報告・連絡・相談はしっかりね」みたいなことを言うと、ほとんどの国でポカンとされる。場合によっては「なんだよこいつ、人を子ども扱いしてヤバイやつだな」と露骨に嫌な顔をされることもある。

なぜかというと、多くの国で「働く」ということのは、個人が自主性をもって進めることであって、乗り越えなくてはいけない課題があってもまずは自分の頭で考えて、試行錯誤をしていくのが当たり前という考え方があるのだ。

中には、「ホウレンソウ」を無理に押し付けられることは、奴隷や召使いのように「働かされている」と感じる人もいる。組織のための滅私奉公が当たり前の日本と違って、個人の尊厳を傷つける高圧的な要求と捉える国も少なくないのだ。

ビッグモーターと対極にあるホワイト企業の考え

そのため、海外進出した日本企業の中では、「ホウレンソウ」は現地雇用の人々とのトラブルに発展しがちなので、現地の労働文化を尊重して、無理強いしないケースもあるのだ。

実際、国内でも「ホウレンソウ」を否定する企業が増えてきている。その代表が、岐阜県にある電気・設備資材メーカー「未来工業」だ。高年収なのに1日7時間15分就業で残業禁止が原則というホワイト企業ぶりで「社員が日本一幸せ」と言われ、同社では、「ホウレンソウ」が禁止されている。その理由を創業者である故・山田昭男氏はこう述べている。

「近頃の管理主義は、社員を信用せずに、上司が事細かに口出しして“子ども扱い”をしとる」(東洋経済オンライン 16年4月13日)

そんな「未来工業」と対極にあるのが、「管理主義」が暴走していたビッグモーターだ。経営計画書に「経営方針の執行責任を持つ幹部には、目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える」と明記されていたように、「部下」は上司に徹底的に管理をされていた。細かい報告や連絡が徹底されていたことはもちろん、目標が達成できないなら、なぜできないのかを説明するよう口すっぱく言われていた。つまり、「ホウレンソウ」に固執した組織だった。