人間の体の細胞の数は、およそ37兆個といわれています。一つひとつの細胞が、血液で運ばれてきた栄養と酸素を受け取り、ゴミや二酸化炭素を戻しています。
体のゴミには、次のものがあります。
●尿素窒素……たんぱく質が分解された後にできるゴミ
●クレアチニン……筋肉が運動するためのエネルギー源の燃えカス
●尿酸……遺伝子の構成成分であるプリン体が、肝臓で分解されてできるゴミ
血液に乗って運ばれてきたゴミは、腎臓の糸球体という組織でふるいにかけられて、不要なものは尿として排泄されます。つまり、尿は血液からできているわけです。
腎臓の働きが低下してふるいがザルになると、血液中にゴミが残るだけでなく、必要なものは尿に混ざってどんどん出ていきます。
自覚症状が出てからでは手遅れである
体のゴミの排泄というと、便を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、便に含まれるのは食べ物の残りカスや腸内細菌の死骸など、ほとんどが腸のゴミです。
一方、尿については、血液に乗って運ばれてくる、全身のゴミを排泄しているのです。便秘が数日続いても不快な程度ですが、尿が出なくなることは生命の危機につながる深刻な事態です。
この状態が続いたら、体にはゴミがたまっていきます。先ほどお話しした「ゴミ焼却施設のない町」「下水処理場のない町」のような状態になってしまいます。そして、心臓など全身の臓器は本来の働きができなくなり、命の危機にさらされます。
もしも体から腎臓がなくなれば、汚れ切った血液が全身を巡り、脳や心臓、肝臓などはゴミだらけです。そのために、全身の臓器は本来の機能を果たせなくなるのです。
腎臓は「沈黙の臓器」と言われます。病状の変化は少しずつ起こるので、自覚症状はなかなか現れません。むくみや頭痛、だるさを感じるようになっているときには、すでに腎臓の機能低下はかなり進行しているので、「非常にまずい状態」になっています。
拙著『人は腎臓から老いていく』では、腎臓を元気にする「食」「運動」「呼吸」について詳しく解説しています。これを参考にしながら、普段から自覚して、腎臓を傷めつけない生活習慣を心がけてほしいです。