封建的な親の価値観が嫌だったがその連鎖が自分の子にも

<解説>

親が子どもたちを等しく扱わないことは、実はよくあることです。ヒロシのケースでは封建的な地域ということですから、旧民法で定められた家制度、つまり戸主として家全体の支配権を有することになる長男とそれ以外のきょうだいの間には、親による扱いに雲泥の差があったと思います。大学に行かせてもらうなど、もっての外だったかもしれません。

宮口幸治、神島裕子『逆境に克つ力 親ガチャを乗り越える哲学』(小学館新書)

そうしたいわば「身分制度」が嫌だったヒロシは、家を離れ、都会で就職しました。もしヒロシの両親が「本家とか分家」にこだわらない、きょうだいを平等に扱う人たちだったら、どうだったでしょうか。ヒロシは田舎に留まっていたかもしれませんし、都会に来ていたかもしれません。後者の場合でも、今と同じように学歴や訛り、子どもの教育費などで苦労していたかもしれません。ただし、自分の子どもたちを平等に扱っていた可能性があります。

ヒロシは自分が、自分の子どもたちを不平等に扱っていることを、下の子が女児だという理由で正当化してしまっているのかもしれません。封建的な親の価値観で将来が縛られたという点でハズレガチャで、その呪縛が、別の形で自分の子にも連鎖しそうになっているのです。

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