ストレス過多の状況を解消するには、どうすればいいか。精神科医の樺沢紫苑さんは「仕事の失敗で1000万円の借金を負って精神を病み来院された50代の男性は、最初は『死にたい』とまで言っていたが、銀行に相談して返済計画の目処がつくと、一瞬で明るい表情になった。悩みの根本原因を取り除かなくても、『どうしようもない』を『なんとかなる』に転換できれば、精神的な余裕が生まれる」という――。

※本稿は、樺沢紫苑『言語化の魔力 言葉にすれば「悩み」は消える』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

「どうにもならない」が、最大のストレス

「ブラック企業に勤めて、毎日がたいへん。メンタルが病みそうです」

労働環境が劣悪。ストレスが多い仕事で、かつ毎日残業……そんなブラック企業に勤めて3カ月で「うつ」になる人がいます。一方で、同じブラック企業に勤め、同じ仕事内容、同じ勤務時間で3年以上働いているのに平然としている人もいます。

この違いは何なのでしょうか?

答えは「コントロール感」の有無です。

実は、「うつ」になった人は、忙しいことがストレスだったわけではありません。忙しい勤務体制を、「自分でコントロールできていない」ことがストレスなのです。

「コントロールできていない」とは、「やりたくないことを、やらされている状態」のこと。

具体的には、「やらされ感を持ちながら、嫌々仕事をしている」「仕事に工夫の余地がなく、言われた通りに、言われたやり方で、仕事をこなさなければならない」「マニュアルと違うやり方をすると怒られる、やり直しをさせられる」

「反論や議論の余地がない、意見を言うことが許されない」「横やりが多い」「裁量権がない」「時間に関して厳密すぎる」「まったく融通が利かない。杓子定規」などです。

まったく同じように忙しい労働環境に置かれても、「コントロール感」さえ持てていれば、むしろ「楽しい」「充実している」と感じられるようになります。