相手から攻撃されたとき、ダメージを最小限にする対応は何か。精神科医の樺沢紫苑さんは「嫌味や悪口を言われ、反撃するのは逆効果だ。凹んだときにこそネガティブ感情を平常心で交わす魔法の言葉を使うといい」という――。
※本稿は、樺沢紫苑『言語化の魔力 言葉にすれば「悩み」は消える』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
「ストレス耐性」ではなく「レジリエンス」を高める
「ストレス耐性」という言葉があります。ストレスに耐える力、我慢強さのようなイメージです。
しかし、最近の心理学、精神医学の領域では、「ストレス耐性」を高めるのではなく、「レジリエンスを高めよう」ということが言われます。
レジリエンスは、「心のしなやかさ」「心のバネ」「回復力」と訳されます。もともとは工業用語で、「バネの弾性力」を示す言葉です。嫌なことがあって凹むことはある。そこから、バネのように、速やかに元の状態に戻ることができればいいのです。
心をしなやかな状態にしておけば、多少のストレスや苦しい出来事で凹んでも、すぐにやり過ごし、回復することができます。
多くの人はストレスに直面した時に、なぜか「我慢強さ」「忍耐力」「ストレス耐性」を意識します。
「こんなにたいへんな状況だから、我慢しないと!」
我慢する必要など、1%もありません。「我慢する」ではなく、バネのようなしなやかさで、ストレスをするりとかわせばいいのです。
一番良いのは、ダメージを受けないこと。それを私は、「スルーする」と言います。
あなたに必要なのは「スルー力」です。ダメージを受けなければ、「元に戻る」必要すらありません。
ボクシングの試合を見ていてよく思います。相手がどんなに強烈なパンチを持っていても、当たらない限りは、ダメージを受けません。ボクシングの強い選手はスウェーが上手で、相手のパンチをもらわない。
スウェーとは、上体を前後左右に揺らすことで、相手のパンチをかわす防御技術のことです。どんなに強烈なパンチも、当たらなければ、ダメージはゼロです。