東京大学の学生男女比はおよそ8:2で、性別の偏りが長年の課題になっている。中でも、地方出身の女子学生には、首都圏出身の学生や地方出身の男子学生では感じにくい、特殊な「壁」があるという。ジャーナリストの浜田敬子さんが取材した――。
安田講堂
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女子学生が少ないのは「能力差」ではない

「東大女子2割の壁」――。東大の全合格者に占める女子学生の割合がなかなか2割を超えない現状を表した言葉が生まれるほど、「2割」問題はこの10年ほど、東大にとって大きな課題だった。2023年には女子学生の割合が22.7%になったが、過去最高だった21年度の21.1%を更新しただけでも、メディアで話題になるほど「2割の壁」は厚かった。

大学側も手をこまねいていたわけではない。在校生に母校を訪問してもらったり、女子高生向けの説明会を開催したり、女子学生対象に家賃の補助制度を設けたりと対策は打ってきた。それでも女子学生比率は18〜19%で推移してきた。

他大学と比べても圧倒的に女子学生が少ないという現状の要因は、単なる「能力の差」ではないことは大学側も認識している。

「この性別の偏りは純粋な能力差として理解することはできません。男女がほぼ同数いるはずなのに、これほど明確な偏りが生じる原因は、個人の能力差以外の部分にあります」(2019年7月、当時の松木則夫・東京大学男女共同参画室長インタビューより

なぜ地方女子は東大を目指さないのか

能力以外に女子が東大を目指さない理由とは何か。

その実態の一端を明らかにしたのが、地方女子たちの大学進学の選択肢を増やそうと活動する東大生のプロジェクト「#YourChoiceProject」(以下、#YCP)の「なぜ、地方の女子学生は東京大学を目指さないのか」という調査だ。

女子の中でもさらに少ない地方出身女子。首都圏の中高一貫進学校と比較すると、より東大を目指すことを躊躇したり、そもそも進路の選択肢にすら考えなかったりするという実態をデータで明らかにした。