地元・安全志向は30年以上前から変わらない
浪人を回避する傾向も顕著だ。「志望する大学に行くためなら浪人したいと思うか」という質問に対して、首都圏出身では男女に差がなかった一方、地方女子と男子の間には大きな差がある。そもそも大学を選ぶ段階で、地方女子の約半数が「偏差値の高さ」より「合格の可能性」を重要視すると答えている。
親の影響も大きい。「保護者からできるだけ偏差値の高い大学に行くことを期待されている」ことに対して、首都圏では男女差がなかったが、地方では男子に比べて女子への期待度が低い。さらに調査からは地方女子ほど、親の期待が自身の進路選択に大きな影響を及ぼしていることも分かった。
チャレンジせず、できるだけ安全圏で、さらに実家に近い大学に行くことを期待されている地方女子。同じ地方でも親たちが、できるだけ地元で、資格の取れる大学への進学を望むのは女子に対してだ。私は30年以上前に、山口県の県立高校から東京の大学に進学したが、その当時と地方女子をめぐる状況がそれほど変わっていないことにかなりショックを受けた。
同じ学力でも首都圏女子より自己評価が低い
深刻なのは、こうした親たちの期待が当事者たちの意識にも大きく影響し、地方の女子たちの自己評価が首都圏の男女や地方男子に比べて低くなっていることだ。調査からは「同じ程度の学力」にもかかわらず、地方女子が首都圏の女子や地方男子に比べて、自分の評価が低いことも明らかになっている。
東京大学男女共同参画室特任助教で、教育社会学の研究者でもある中野円佳さんはこの調査の意義についてこう話す。
「教育社会学の研究では、女子の浪人の少なさや特定領域での少なさなど、男女の進学先に偏りがあることは長年研究されてきました。特に地方女子の場合、親が自宅から通える大学に進学することや資格を取得することを勧める傾向があり、学校側の進路指導や女子自身の意向もチャレンジせず現役での進学に重点を置くなど、大人の期待とそれに影響を受けた本人の希望が絡まって、難関大学を選択しづらいことは、最近の論文などで指摘されてはいました。ですが、今回の調査のように、特定の偏差値以上の高校生に絞って調査をしたデータは、東大の女子学生がなぜ少ないのかを検証する上で説得力を持つと思います」