育休中には「リスキリング」に勤しんだほうがいいのか。ジャーナリストの浜田敬子さんは「育休中に組織マネジメントの研修を受けた人は、子育てと仕事の両立に対する自信が高まったという研究結果がある。『職場に復帰できるのか』という不安に応えるような学びを優先するべきではないか」という――。
会議室で一人、頭を抱えているビジネスウーマン
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育児に疲れ果てて「学び」は一切できなかった

岸田首相が「育休中のリスキリング」を後押しすると国会で答弁して、「育児の大変さをわかっていない」と大きな批判に晒されたのは今年1月のことだった。

16年ほど前の話にはなるが、私自身、出産後は極度の睡眠不足と孤独な育児に疲れ果てていた。今思えば軽い育児ノイローゼ状態で、何かを学ぶ気力などとても持てなかった。

一方で、同じ時期に育休を取った同僚は、子どもが比較的長時間寝続けてくれるタイプだったからか、彼女が私より10歳も若く体力があったからか、育休中にしっかり勉強してFP(ファイナンシャルプランナー)の資格を取得した。

「私には到底無理」と思っていたことを成し遂げた彼女に対しては心から敬服すると同時に、育休中「学び」らしいことを一切できなかった自分を責めた。

母親を襲う「元に戻れるのか」という不安

同僚の育休中のキャリアに対する意欲を見ていた私は、復職後、当時所属していたAERAで育休中の学びについて特集した。取材した人たちは親などに子どもを預け学校に通い気象予報士の資格を取得するなど涙ぐましい努力をしていたが、その背景には、正社員であっても育休復帰後に仕事が与えられるのか、元の職場に戻れるのかという切実な不安があったのを覚えている。

岸田首相の育休中リスキリング発言を受けて、働く母親を支援する株式会社mogが、育休中の女性100人にアンケートをとったところ、8割近い人が資格取得のために勉強や語学学習、ボランティアなど育休中に何らかの活動をしていた。その理由としては、復職後の準備やスキルアップのためと答えている。それだけ復職後の厳しい環境を自覚しているからだろう。

復職後の職場に自分の居場所はあるのか、本当に子育てと仕事を両立していけるのか。キャリアは望めるのか――。自身のつらい育休経験と、取材でも感じた女性たちの復職後の不安。岸田首相はこうした現実をどこまで本質的に理解しているのか。育休中リスキリング発言への反発は、理解の浅さへの不信感から生まれたものだろう。