知識やスキルを学ぶだけがリスキリングなのか

「人事を通して、こうした研修を勧められること自体、会社の期待の表れだと考えてほしい。育休中に業務に関わることはさせられないという企業もありました。であれば、復職直後、例えば保育園のならし保育の期間にこうした研修を組み込めば、育休中には子どもを預ける先がなく研修を受けづらいと考えている人も参加できます」(国保さん)

今回岸田首相が使ったリスキリングという言葉は今一種のバズワードになっているが、この言葉の正しい定義は、新しい仕事や職務に移行するためのスキル習得を指す。特にAIやデジタルスキル、気候変動問題対応に欠かせない環境関連の知識やスキルなどを学び、成長分野に移るところまでが含まれるので、育休中の学びは正確に言えばリスキリングには当たらない。

とはいえリスキリングは本来、個人の自発的な学びではなく、企業が経営戦略とセットで社員に投資することが前提とされる。育休から復職してきた女性たちに企業内でどう働いてほしいのか、その期待を伝え、意識を高めてもらうための研修はまさに人材投資の一環と言えるのではないか。

セミナーに参加する女性たち
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ワンオペ育児では「学びたい」と思いにくい

今回の研究では、復職半年後の追跡調査を本人だけでなく、上司にも行っている。復職前に自己効力感を高めた人が、チームを意識して働けるようになれば、それは組織にとってもプラスだということを考えると、企業が投資する意味は十分にある。

そして個人的には、上司側の研修も必要だと感じる。実際に復職してくる女性たちが何に悩み何を不安に思っているのか。女性側だけが上司や組織の論理を学ぶのではなく、上司にこそ復職者の両立の実態や気持ちを知ってほしいとも思う。

この研究でもう1点興味深いのは、同じ企業内でもこの研修に参加しなかった人たちは、「家庭支援のスコアが低い」という傾向があったことだ。つまり夫や実家などのサポートがない人は、研修などの機会があっても積極的に参加しようと思えないのだ。

これは育休中に限らない。復職後も、夫の家事育児の参加が十分でなければ、妻のキャリアへの意欲は大きく損なわれる。21世紀職業財団の調査によると、総合職女性の4割が昇進ややりがいを見いだせない「マミートラック」に陥っていると答えているが、マミートラックに陥るかどうかの一つの要因は夫にあると言える。