「地獄の数珠つなぎ」で成り立つ業界

そんなバイタリティのある先輩方と仕事をしていると、その人たちの働き方に合わせて自分も無茶をしなければいけない場面が頻繁に発生します。

定時後も時間関係なくビデオ会議があり、金曜に打ち合わせをして月曜に提出という労働基準法など無視した働き方になります。

そんな無茶な依頼でも我々社畜に拒否権はありません。当然上司もその働き方を黙認し、広告業界全体がこの働き方に関しては仕方ないという空気になっています。

もしも、この働き方が嫌で仕事を断ろうものなら、やる気がない奴というレッテルを貼られ、その人に良い仕事が回ってくることはなくなり、日々小さな業務を淡々とこなすだけの機械となりはてます。

そのため、みんな嘘でもやる気のあるふりをして、広告代理店の無茶な要望に応え、従順な犬のように尻尾を振って媚を売ります。そして、広告代理店も同じようにクライアントに媚を売り、仕事を獲得するために必死になります。

このような「地獄の数珠つなぎ」によって、広告業界の仕事は成り立っています。

きっと皆、土日は休みたいですし、平日も定時退社してアフターファイブを楽しみたいはずです。しかし、そんな価値観を職場で吐露するなんてご法度です。

皆、心の底では、休みたいと思っていますが、言ってしまうと仕事を失うので、易々とは言えない状況にあります。そのため見かけは仕事好きな人でも、無理して働いている人もいます。

ブラック企業のせいで社畜にならざるを得ない

コメントでもよくこんな声をいただきます。

玄田小鉄『ブラック企業で生き抜く社畜を見守る本』(ワニブックス)

「ブラック企業が生まれるのは、この環境で働きつづける社畜がいるせいだ」と。

ごもっともですが、実際に現場で働いている身からすると、社畜のせいでブラック企業が生まれるのではなく、ブラック企業(ブラックな環境)があるせいで、社畜にならざるを得ないというのが正しいかもしれません。

この仕事が好きでやっているのですが、広告業界に順応して良い仕事を獲得しようとすると、社畜となって会社に心臓を捧げる勢いで働く必要があります。

そうしないと無能扱いされて、つまらない仕事だけをやることになってしまいます。

このバランスは難しいです。

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