「広告業界のデザイナー」はどんな働き方をしているのか。デザイナー兼YouTuberの玄田小鉄さんは「広告の仕事は、場所の奪い合い。このため『金曜に打ち合わせをして月曜に提出』というスケジュールでも断れない。華やかな仕事で自由に働いていると思われがちだが、現状を知ってほしい」という――。

※本稿は、玄田小鉄『ブラック企業で生き抜く社畜を見守る本』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。

残業するビジネスマン
写真=iStock.com/gorodenkoff
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広告業界は華やかに見えて鬱だらけ

広告業界で働いていると、周囲の多くの人がうつになって辞めていきます。

僕が働いているデザイン事務所でも今まで5人ほど鬱になって辞めていきました。業界の知人のことも含めると10人以上は精神疾患になっています。

外から見ると、広告業界のデザイナーは華やかな仕事で自由に働いていると思われがちです。しかし、現場にいる人たちは日々苦しみ悩みながら働いています。その現状が世の中には知られていないなと思います。

華やかなイメージがあるからこそ、若い人は憧れてデザイナーを目指し、この業界に入ってきます。デザイナーの適性がある人は繊細で気配りのできる人がとても多いです。

その性質と広告業界のパワハラ体質がミスマッチしていて、働いて数カ月で何らかの疾患が発症します。

事務所の同僚は、ストレス性の蕁麻疹と喘息が出たり、対人恐怖症になり電話に出られなくなったり、躁鬱を発症し、会社に来られなくなった人たちもいます。

幻想を持っている人に現状を伝えたい

幸い僕は働けないような状況にはなっていませんが、明日は我が身と思いながら、なるべくストレスを溜め込まないように心がけています。

近年は、働き方改革によって多少マシになってきていますが、それでも根底に悪しき慣習はいくつも残っています。その悪しき慣習を世の中に伝え、広告業界は想像以上に過酷な業界だと心構えをもって入社することができれば、鬱になることは回避できると思います。

YouTube活動をしている理由のひとつとして、華やかな世界と幻想を持っている人に現状を伝えたいという思いもあります。

なぜ広告業界はブラックな働き方になるのかというと、いくつか要因があります。

YouTubeでも語ったりしていますが、まだまだ話し足りないことが大量にあるので、本稿で思う存分語ろうと思います。

エピソードを書いていく中で、「広告業界は良くない」という視点に寄ってしまっていますが、自分としてはその状況も受け入れています。ただ、変えていかなくてはいけないという気持ちはあります。