理由のひとつが「0か100かのコンペ形式」

ブラックな働き方になる理由のひとつとして、広告の仕事は「場所の奪い合い」というのが大きいです。競争は広告業界だけではないでしょうが、ほかの業界の話を聞いていても、広告業界のあり方は良くないと感じます。

世の中には複数の広告代理店があり、各社クライアントから仕事を依頼されて広告を制作しています。

その中にはコンペ形式の案件もあります。コンペとは、企業が広告代理店にオリエンテーションをし、広告の企画を募ります。

お題を受けた広告代理店は、企画をして、それにまつわる広告のデザインなどを広告制作会社やデザイン事務所に発注します。

そして広告代理店は出来上がった企画をクライアントにプレゼンします。プレゼンを受けたクライアントは各社からの企画を比較検討し、ベストなもの1案を採用します。

そうして獲得した広告代理店に正式にその案件を発注します。ここまでしてようやくひとつの案件を獲得することができます。

握手
写真=iStock.com/kyonntra
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1カ月間、人権を失うが如く働きつづける

コンペ形式ではなく、指名の決まり仕事もありますが、そういう仕事は規模も小さく、仮にやっていても現状維持で面白いこともしづらい傾向にあります。そういう仕事をしていても社内的な評価も上がらないため、みんな意地でも新規開拓しようと日々勤しんでいます。

我々デザイン事務所は仕事をもらえるだけありがたいのですが、やっかいなことにコンペ案件はスケジュールがとてもタイトです。

オリエンを受けてから提案まで1カ月ほどしか猶予がなく、一度その仕事がはじまってしまったら1カ月間人権を失うが如く働きつづけることになります。

プレゼンを獲得するために広告代理店からの修正地獄がつづきます。高いクオリティを求めるため、手を抜くことは許されません。広告代理店も獲得しないと意味がないため、死ぬ気で取り組んでいます。

そんな人たちから仕事を受けているので、当然デザイン事務所のデザイナーもその気持ちに応えるように毎日深夜まで作業をして親身に対応しなければいけません。