スマホでは味わえない「偶然の出会い」が現代人には必要だ
書店には、ネット書店では経験できない本との「偶然の出会い」がある。店頭の平積みになった新刊コーナーで話題の1冊を見つけ出す楽しさや、書棚に並ぶ良書の中から自分好みの1冊に出会う驚きは、リアル書店ならではの体験で、たまたま手に取った本が人生に影響を及ぼしたケースは少なくないかもしれない。
そこに書店の存在意義があり、書店が出版文化の核心ともいわれるゆえんだろう。
「街の本屋さん」の灯を守ろうとするなら、従来の書店という概念をいったん捨て去り、新たな文化的価値を創造する拠点として生まれ変わるしかないのではないだろうか。
ネットの世界は万能ではない。興味をもつ情報ばかりに囲まれるエコーチェンバーや、見たい情報しか見えなくなるフィルターバブルなど、ネットの弊害を駆逐するために、「未知の本」と出合えるリアル書店はきっと有効だろう。
書店再興の解は簡単には見つからないかもしれないが、模索する価値は十分にある。