同じ状況が10年続けば、ほとんどの書店はなくなってしまう

経済産業省の「商業統計調査」によると、全国の書店数は、1988年には2万8216店(洋書取次店なども含む)を数えていた。ところが、2000年代初めに実店舗は2万店を割り、その後、右肩下がりで減少し、20年にはついに1万店を割り込んだ。

出版文化産業振興財団が22年9月にまとめた調査によると、実店舗は8582店にまで減少している。

この調査で特筆すべきは、書店空白自治体の拡大だ。

全国1741市区町村のうち、「街の本屋さん」がまったくない自治体は456(26.2%)に上った。このうち、市レベルこそ792市のうち17市(2%)にとどまっているが、町は743町のうち277町(37%)、村になると183村のうち実に162村(89%)で消えてしまった。1店しかない自治体も334(19.2%)あり、2店以上ある自治体は、もはや半分しかない。

都道府県別にみると、沖縄56.1%、長野51.9%、奈良51.3%の3県で、半数を超える自治体で書店がなくなった。4割を超えたのも、福島47.5%、熊本44.4%、高知44.1%、北海道42.5%と4県ある。逆に、全自治体に書店があるのは広島と香川の2県だけだ。。

市町村合併で自治体の行政単位に変動があるため単純な数字の比較は難しいが、人口減少が続く地域ほど書店の廃業が続く様子がうかがわれ、全国的に「書店空白地帯」が広がっているのが実情だ。

同財団理事長の近藤敏貴トーハン社長は「このさき10年、今と同じ状況が続けば、ほとんどの書店はなくなってしまう」と危機感をあらわにする。

貼り紙のある、シャッターを下したアーケードの店舗
写真=iStock.com/Cuckoo
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Z世代にとって書店は「敷居が高い」

ネット社会の浸透にともない、読書習慣は様変わりしている。

欲しい本があればネット書店で購入し、スマートフォンで電子書籍や電子コミックを読む。知りたい情報の多くはネットですぐに得られるし、直近では生成AI(人工知能)のChatGPTもある。

本を選ぶきっかけを問うた読売新聞の調査(複数回答)では、リアル書店が42%でトップだが、SNSなどのネット情報15%やネット書店11%の存在感が増している。

若年層が本を読まない理由について「つらい」「時間がもったいない」「楽しくない」「書き手を知らない」「ネットの方が便利」というキーワードが語られている。

中でも、デジタルネイティブのZ世代(1990年代半ば~2010年生まれ)は、日常的に新聞や書籍・雑誌の印刷メディアに触れる機会が少ないため、書店の敷居が高く、近くに「街の本屋さん」がなくても、少しも困らないようだ。