大手出版社はデジタルシフトで成果を上げているが…
出版科学研究所によると、22年の出版市場(推定販売金額)は、1兆6305億円(前年比2.6%減)。コロナ禍の巣ごもり特需が収まり4年ぶりの前年割れとなったが、読書体験そのものが激減したわけではなさそうだ。
ただ、このうち、印刷出版は1兆1292億円と前年から6.5%も減少、1990年代の4割にまで落ち込んだ。一方、電子出版は7.2%増の5013億円と続伸し、シェアは3割を超えた。電子出版が印刷出版に置き換わっている構図だ。
電子書籍は、用紙代や印刷代が不要で、返本リスクもなくなるため、コストを大幅に抑えられるメリットがある。
このため、大手出版社は、デジタル事業に注力し、成果を上げ始めている。
講談社は、すでに電子出版や版権事業の収入が印刷出版の売り上げを上回った。22年11月期の売上高は1694億円で、コロナ禍が始まる前の3年前に比べ25%増、純利益は倍増した。
『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』が空前の大ヒットとなった集英社は、21年5月期の売上高が前年から31.5%も急増して初めて2000億円を突破、純利益も118.3%増の437億1800万円と、未曽有の増収増益を記録した。
KADOKAWAも、出版部門は23年3月期の売上高が1399億9000万円で、前年に比べ5.3%増と堅調だ。小学館は、22年2月期の売上高が1057億円と7年ぶりに1000億円を超え、23年2月期も引き続き大台を確保した。
出版不況と言われて久しいが、大手出版社は、ようやくネット時代にふさわしい業容転換を見いだしたようにみえる。
必要なのは出版流通の大改革
出版社と違って、本を売って稼ぐしかない書店は、いまだにトンネルの中で先行きが見えない。だが、出版不況の犠牲にならないよう、生き残りをかけてさまざまなチャレンジが始まっている。
徹底的に品ぞろえにこだわったり、カフェを併設したり、コンビニと一体化したり、ホテルと直結したり、ワークスぺースを備えて入場料をとる書店まで現れた。いずれも、本と接する機会を増やし、売り上げにつなげようという狙いがある。
「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」の政策提言は、そんな書店の努力を後押ししようとするものだ。
ただ、いずれの施策も、限定的な救済策で、対症療法の域を出ていないように見える。書店業界が直面している危機は出版流通にかかわる構造的な問題だけに、求められるのは抜本的な構造転換だ。