絶滅危惧種になった街の書店
「街の本屋さん」が全国で急速に姿を消している。
1980年代には2万5000店を超えていたが、今や3分の1にまで減少し、最近20年間に限れば半減した。書店が1店もない市区町村は4分の1にも上る。ふと気がついたら近所の本屋さんが消えていたという経験がある人は少なくないのではないだろうか。
読書習慣の減退による本離れ、ネット書店の伸長、電子書籍の普及、過疎化・少子化の進行など、さまざまな要因が複合的に絡み合って書店を取り巻く環境が激変し、廃業に追い込まれるケースが続出している。
出版市場そのものはコロナ禍の巣ごもり特需や電子書籍の伸長もあっていくらか持ち直しているが、出版ビジネスを支えてきた「出版社→出版取次会社→書店」という流通ルートはやせ細るばかりだ。出版社と書店をつなぐ取次会社や、読者と直接つながる書店は、ますます存在感を失い、瀕死の危機に直面している。今や「絶滅危惧種」の感さえある。
「ネット社会における書店」の存在意義を見つめ直すことができないと、リアル書店は本当に消えてしまいかねない。
出版文化の危機が政治的課題に
こうした書店の窮状を憂える自民党の議員連盟「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟(書店議連)」(会長・塩谷立元文科相)が2022年12月に中間とりまとめを行った後、4月末に書店再興に向けた初の政策提言書をとりまとめ、5月24日に党文部科学部会・文化立国調査会合同会議に報告した。
その内容は、政府が6月に策定する「2023経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」に盛り込むことを目指すという。出版文化の危機が政治的課題になったといえる。
政策提言書はまず、「来訪者が現物を直接確認できる『街の本屋』は、ネット書店よりも、『未知の本との出会い』の可能性をより大きく秘めている」とリアル書店の価値を強調。「書店がなくなることは、日本の文化の劣化に繋がることを意味する」と出版文化の衰退に強い懸念を示した。
そして、書店の現状について「書店の数は15年で約40%減少している。2022年9月時点では、全国市町村のうち26%は無書店市町村となっている。都心部の有名書店も相次いで閉店が生じている」と苦境を報告した。