「前へ前へ」進もうとしてはいけない
それでは、どのような歩き方が健康に良いのでしょうか?
ポイントはたった一つ。背中の筋肉を使って、力を入れずに歩くことです。人間は本来、体に負荷をかけずに歩くことができます。体に負荷をかけないというのは、筋肉に余計な力を込めない、ということです。無理も我慢もがんばりも、必要ないのです。そのためのカギとなるのが、背中の筋肉です。
私が街中やレッスンで拝見する限り、からだの前側の筋肉だけを使って歩いている人がとても多いです。歩くとき、人は「前へ前へ」と足を進めていくので、背中のことなど意識していません。これは当然かもしれません。
でも、一度でいいので「背中! 背中!」と、背中を意識して歩いてみてください。背中に少し意識を向けるだけで、余計な力を入れずに、ラクに歩くことができるようになります。
背中の筋肉を使って歩くことができると、それだけで背中が勝手にゆるんでいきます。いつもと変わらない日常の動作が、マッサージや整体に通う効果に匹敵するようになるからです。
背中の筋肉を「ゆるめる」ことを意識して欲しい
私は、背中の筋肉をたくさん動かしながら歩くことこそが、健康な体を手に入れるための一番の近道だと思っています。わざわざストレッチやトレーニングをしなくても、歩きながら自然に背中を動かすことで、背中がゆるんだ状態を保つことができます。
背中がゆるむと、それまで動かせていなかった筋肉も連動して動かせるようになりますし、自然と呼吸は深く安定し、血液やリンパの流れも改善されます。
歩きながら、背中の筋肉をたっぷりと動かすのはとても心地よい感覚で、一度覚えたら忘れられなくなるでしょう。私自身、何十年も苦しんできたひどい肩こりと頑固なぽっこりお腹が、背中を使って歩くようになってすんなり解消しました。
ポイントは「腕を後ろにふる」だけ
「背中の筋肉を使って歩く」というのは、具体的には「上半身と下半身の筋肉を後ろに集めながら歩く」ということです。こう説明すると、なんだか難しそうですが、心配しないでください。上半身は腕のふり方をほんの少し変えるだけで、変わります。
何も考えずに歩くと、腕を前の方に振って歩いている人が多いのですが、これでは背中の筋肉を十分に使えません。背中の筋肉を使って歩くための最大のポイントは、「腕を後ろにふること」なのです。
腕の後ろ側の筋肉を使って腕をふり、みぞおちから上の筋肉を、背中側に集めていきましょう。まずは、この「腕を後ろにふる」という感覚をぜひ覚えて頂きたいと思います。