「胸を張って颯爽と歩く」ことの弊害

胸をピンと張った姿勢で歩き続けてしまうと、呼吸の質の低下、内臓機能の低下、肩こりや首こり、腰痛、スタイルの悪化などをもたらします。とても大げさに聞こえるかもしれませんが、その理由についても簡単にご説明していきます。

まず、胸を張った姿勢をとると、呼吸が浅くなります。人の体は、胸腔きょうくうといって、肋ろっ骨こつや横隔膜おうかくまくなどで囲まれた空間に左右の肺がおさまっています。胸を張ると、この胸腔がつぶれてしまって、うまく広がらなくなってしまい、深い呼吸ができなくなります。

また、胸を張ると骨の位置はどうなるでしょうか? ①肋骨は前につき出て、②背骨は反り、③骨盤は傾いた状態になります。ペットボトルがいびつに歪んだ状態です。容器が歪むと、中におさまっている臓器が圧迫されます。つまり、内臓の働きが悪くなってしまうのです。胃が圧迫されると胃の不調に、腸が圧迫されると便秘に、卵巣や子宮が圧迫されると生理痛などにつながります。

胸を張ると、いかにも体がグ~っと上のほうに上がったように感じるかもしれません。でも、実際に体の中で起こっていることはその逆です。驚くことに、内臓は「上から下へ」と押し潰されてしまっているのです。

アジアの人々は横断歩道を渡っています
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです

腰痛、首や肩こりを引き起こす

ペットボトルがきれいな形のとき、人間の背中はゆるやかなS字カーブを描いています。胸を張った姿勢で歩くと、腰が反って、S字カーブがきつくなります。腰に過度な負担がかかるので、腰痛の原因になります。

また、腰が反ると相対的にお腹がぽっこり出てしまいます。背中の筋肉の動きは大きく制限されるので、背中の筋肉は次第に固くなり、しなやかさを失います。血液やリンパ液の流れが悪くなって、首や肩まわりのコリを引き起こします。

このような理由から、胸を張って颯爽と歩くことは、体に良いことは一つもありません。せっかく健康になりたくてウォーキングを頑張っているのにもかかわらず、どんどん疲れてしまい、体のあちこちに負担をかけ、スタイルも悪くなってしまうという、とても残念な歩き方なのです。