※本稿は、犬飼奈穂『背中をゆるめると健康になる』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
からだの不調の原因は「背中」にある
もしあなたが肩や腰などに慢性的な不調を感じているなら、一度「自分の背中」に目を向けてみてください。年齢に伴い、次のような変化を感じていませんか?
・肩や首が常に重だるい。
・体のあちこちが痛む。
・すぐに疲れてしまう。
・下腹がポッコリ出て引っ込まない。
・お尻がたれて、太ももが太くなってきた。
・猫背がひどくなった。
・新しいことをするのが面倒くさい。
・イライラすることが増えた。
・ぐっすり眠れなくなった。
・実年齢よりも上に見られることが多い。
次々と押し寄せるこんな不調やコンプレックス。実は、「歳のせい」や「疲れのせい」ではなく、知らず知らずのうちに「背中が固くなっている」ことで引き起こされているのです。
突然「背中が固くなっている」と言っても、すぐにはイメージしづらいかもしれません。具体的には、「体の後ろ側の筋肉=背中の筋肉」が、こり固まっている状態を指します。
多くの人は、日常生活で「体の前側」の筋肉ばかりを使っています。ものを掴む、パソコンやスマホの操作をする、料理をする、歩く、洗濯物を干す、スマホを見る……。普段の生活では、体の前側の筋肉を使う動画が多く、残念ながら「体の後ろ側」の筋肉はほとんど動かせていないのです。
広背筋が固くなると体が歪む
動かせていないと、筋肉は固くなります。日ごろは意識しない背中の筋肉ですが、人間の体の構造上、とても重要なのです。
「広背筋」と呼ばれる背中の大きな筋肉の一つは、肩甲骨や上腕、骨盤などとくっついています。この広背筋が固くなると、あらゆる不調を引き起こすと言っても過言ではありません。
固くなった筋肉は収縮して、背中の周囲のあちこちの筋肉が不自然に引っ張られます。その結果、肩こりや首こり、腰痛などの不調や、巻き肩(猫背)・O脚などの体の歪みを誘発します。
また、背中の筋肉が固くなると、肺の周辺にある呼吸筋と呼ばれる筋肉の動きも制限されます。肋骨がうまく広がらなくなり、無意識のうちに呼吸も浅く速くなります。呼吸が浅くなると、肺に酸素を十分に取り込めなくなるので、体内の酸素量が減少し、疲れやすさや冷え、集中力の低下、自律神経の乱れなどを引き起こします。血流が滞り、リンパの流れも悪くなって、代謝も下がります。
このように、体はどんどん元気を失っていきます。普段は意識することなく過ごしている「背中の筋肉」が、実はあなたの体調を大きく左右しているのです。