米国企業は利益至上主義を貫く

日本でも2022年に入ると、企業物価指数が前年比で10%台に跳ね上がった。

一方、2022年の消費者物価指数は最高でも4%だった。本来ならその乖離かいり分を縮めようと企業側が価格転嫁するため、消費者物価も追随して上がるはずなのだ。

ところが、日本の企業は、米国のようにすぐには価格転嫁しない。

できるだけ辛抱して、コスト増を“吸収”する努力を試みる。

米国企業は利益至上主義を貫く風土を持つので、そんな企業努力は露ほどもしない。

すぐに値上げに踏み切り、リストラを断行するのが常である。

米国は独占セクターが多い

こうした米国企業の慣行には企業間構造の問題も横たわっていて、独占セクターが多いことが影響している。

例えば鉄鋼、あるいは紙おむつのように、競合する会社がきわめて少ない分野が案外多い。

写真=iStock.com/dusanpetkovic
米国は独占セクターが多い(※写真はイメージです)

1980年代以降の規制緩和によって企業合併、買収を繰り返してきた結果、キーセクターを独占企業が握ったままなのだ。

そうなると、インフレで企業物価が急騰しても、米国企業は簡単に価格転嫁、値上げができてしまう。

これも私の持論なのだが、利益がちょっとでも落ちると、値上げ、リストラに動く米国企業の風土が、結局は米国社会に大きな弊害をもたらしているわけである。

この悪弊が大多数の米国民を痛めつけてきた。

その一方で、日本は米国とは正反対に、むろん限度はあるとはいえ、社会全体におよぶ影響をおもんばかり、企業はできる限りコストを吸収しようとするし、従業員の雇用を確保しようとする。

これは日本が長年培ってきた特有の“美徳”でもあると思うのは私だけではあるまい。