世界が日本的なやり方を評価し、取り込む時代に
そうした日本ならではの特性は、世界が窮地に陥るような局面でないと評価されないものであった。
けれども、今回こそ、世界が本気で日本的なやり方を評価し、取り込む時代に入ってきたのではないだろうか。
パンデミックを経験した世界は、結局、日本的なパーソナルハイジーン(個人衛生)のきわめて高い生活様式に変えざるを得なくなった。
欧米が高インフレに見舞われ、便乗値上げの物価高と便乗リストラが吹きすさぶなか、日本だけが企業エゴを最小限にとどめて、最小限の物価高に抑え込んでいる。
いま、日本人自身はそうは感じていないのだろうが、結局は日本のやり方が効率的で理に適っていると、世界が認め始めている。
これまではそうではなかったけれど、難しい試練に立たされた世界の人々はそうせざるを得なくなり、ようやく理解に至ったようだ。
米国の利益至上主義は限界
私は経済に関して、米国の利益至上主義、株主至上主義はもう限界を迎えており、米国経済は崩壊の危機に直面していると思っているし、かねがねそう伝えてきた。
中国の極端に行き過ぎた統制主義と、米国の極限資本主義の間ぐらいで、日本流が再び評価される局面があるのかなと思いを抱いてきたが、そろそろ日本の出番がやってきた感じがする。
私がそう言うと、懸念の表情を浮かべる人たちがいる。
「たしかに日本企業特有の美徳は存在すると思う。でも、今後の日本の企業は若い経営者に引き継がれていく。若い彼らはそれを受け継ぐのかどうか?」
私は受け継ぐのではないかと確信している。
いまの若い人のほうがミレニアル世代にしても、Zジェネレーションにしても、コミュニティ意識というか、「We意識」、私たちという意識が強い。
それこそベビーブーマー世代に比べると、より個性は豊かではあるけれども、一方で共同体意識が強い人たちなので、私はあまり心配していない。
むしろ、その方向に流されていくことが、日本の本来のやり方にも合っているのではないか。