イーロン・マスクの快進撃は今後も続くのだろうか。エコノミストのエミン・ユルマズさんは「株式市場でテスラはアップル並みに評価されているが、これは過大評価ではないか。イーロン・マスクの政治発言やハチャメチャな行動はビジネスの腰折れを招いている。チャイナリスクにも直面しており、経営者としてすでに限界に来ている」という――。(第2回)

※本稿は、エミン・ユルマズ『大インフレ時代!日本株が強い』(ビジネス社)の一部を再編集したものです。

イーロン・マスク氏とツイッターのロゴ
写真=AFP/時事通信フォト
ツイッター買収は間違いだった(イーロン・マスク氏とツイッターのロゴ)

アップルのスマホそのものが優れているわけではない

読者から、あるいは講演会の席で、こんな質問をいただくことがある。

「自分はアップルとテスラに注目しているが、あなたはこの両社をどう捉えているのか。正直な考えを開陳していただきたい」

両社はハードウェアをつくっている。ただアップルに関しては、たしかにハードウェアの部分もあるけれど、アップルの強みはいわゆるiOSだ。

アップルが開発および提供する、iPhone、iPad、Mac向けのオペレーティングシステム(組み込みプラットフォーム)が秀逸なのである。

アップルのプラットフォームであるアップストアは、2021年に17兆円の市場規模に達したアプリ売り上げのうちの6割を獲得している。

またアップルはプラットフォームの提供者としてアプリ売り上げの3割をとっている。

アップルのソフトウェア部門とハードウェア部門を別々に考えた場合、ハードのバリュエーションはかなり低いのだと思う。

iPhoneにしても、アップルのスマホそのものが優れているのではない。

これより優れているアンドロイドスマホは山ほどある。

皮肉な言い方をすると、私はいつもアップルのiOSを、アップルよりもっと機能の高いサムスンなどのスマホで使えたらブラボーではないかなと思っている。

しかし、それはできないし、ポイントはそこではない。

アップルは音楽から動画から仕事アプリまで自社のエコシステムでつくり上げており、セキュリティーもしっかりしている。そこに価値があるわけである。

それが評価されて、高価格でも売れてきた。