「テスラは自動車会社ではない」は本当なのか

一方、テスラに関しては、本当に自動車の会社であれば、あのバリュエーションはあり得ないと思う。

テスラの株主は、「この会社は自動車会社ではなくてパソコン会社、IT企業なのだ。だから、あのバリュエーションでも正当化できるのだ」と擁護ようごする。

さらに、「優れた自動運転技術やバッテリー技術を持っている」と主張するのだけれど、実際には疑問点がいくつもある。

CO2の「環境クレジット枠」で利益をあげてきた

たしかにテスラは近年、高利益を出しているけれど、これには大きなからくりが存在する。

EUの自動車メーカーが創設したCO2排出削減に取り組む制度「オープンプール」に乗る形で、EV専業のテスラはCO2排出基準を達成できない自動車メーカーに対し、自社が持つ環境クレジット枠を販売してきた。

この環境クレジットビジネスがテスラに巨大な利益をもたらしてきたのだ。

テスラ
写真=iStock.com/jetcityimage
CO2の「環境クレジット枠」で利益をあげてきた(※写真はイメージです)

ここ数年間、環境クレジット売却益は、全期においてテスラの純利益を大幅に上回ってきた。

極論を言うならば、この環境クレジットビジネスがなければ、テスラはいまも“赤字企業”に甘んじていたはずなのだ。

ところが、これまでテスラの環境クレジット枠を購入して忸怩じくじたる思いをしてきた自動車メーカーも、今後は自前EVを次々と出してくる。

だから、テスラの収入源がガタ落ちとなる可能性が出てきたのである。