自動車会社としての「格」の低さを悪用している

次なるテスラに対する疑問は、なぜ自動運転車の開発で、テスラは他社に先んじているのかというものだ。

その答えは明確この上ない。テスラはレピュテーション・リスク、つまり企業に関するネガティブな情報が広がり、ブランド価値や信用が低下して被るリスクを恐れていないけれど、他社はそれを考えざるを得ないからだ。

仮に業界大手のベンツやトヨタが自動運転で事故を起こしたら、これまで積み上げてきた信用が致命的に棄損きそんされてしまう。

かたやテスラは新興EVメーカーに過ぎない。事故を起こしても飄々ひょうひょうとしていられる。

要は、自動車会社としての「格」の低さを悪用している。

性能表示でイカサマのような対応をしてきた

私が悪質だと考えているのは、テスラがバッテリーパワーや走行距離などの性能表示でイカサマのような対応をしてきたところだ。

2023年に入って早々、韓国の公正取引委員会は、テスラが走行可能距離を誇大に広告していたと、課徴金納付を命じた。

EVのモデル3・ロングレンジについて、一度のフル充電で446キロ以上走行可能とうたっていたが、実際には冬場の走行距離は221キロと半分以下だった。

テスラのモデル3
写真=iStock.com/jetcityimage
モデル3・ロングレンジの走行距離距離を誇大に広告していた(※写真はイメージです)

以上、テスラをあげつらってきたけれど、より本質的な疑問と弱点は同社経営者のイーロン・マスクに収斂しゅうれんされよう。