問題なのは「学ぶ際の順序」
微分積分法は、物理学の問題を解くために、重要な道具です。ところが、この基礎になっている数学の理論は、大変難しいものです。とくに連続性の概念が難しい。
しかし、それが理解できなくとも構いません。微分積分法の公式を覚えて、実際の問題に当てはめるだけでよいのです。
「そんなことをすると、間違ったところに微分法を使うことになる」という批判があると思います。確かにそうした危険はあります。しかしそれよりも、微分方程式を解くことのほうが、はるかに重要だと思います。
誤解のないように申し添えますが、私は基礎を無視してよいとか、やらなくてよいと言っているのではありません。学ぶ際の順序を問題にしているのです。
難しい理論でも分かれば一挙に理解が広がる
解析学の基礎である「連続性」という概念は難しいけれども、分かれば一挙に理解が広がります。
私は、実数が連続していることを初めて理解したときの感激をいまでも忘れられません。高校生のときに、高木貞治『解析概論』(岩波書店)を読んで、「デデキント切断」の概念に出会い、実数の連続性の意味が理解できたのです。
ただ、これは、微分法を使えるようになってから後のことです(『解析概論』は、戦前の旧制高校での教科書、参考書です。新制高校の生徒がこれを読んでいたのは、級友の間で、背伸び競争、自慢競争があったからです)。
8割分かったら先に進む
以上から分かるのは、「基礎が分からなくてもよいから、とにかく進んでしまうのがよい」ということです。これを、「数学は真ん中からやれ」と言った人もいます。
例えば、数学には公式がいくつもあります。その導出法を理解しなくてもよいから、使えばよいのです。使っているうちに、公式の意味がだんだん分かってきます。