※本稿は、橋本大也『英語は10000時間でモノになる』(技術評論社)の一部を再編集したものです。
「ボキャビル」はモチベーションがないと続かない
単語を集中して覚える学習をボキャブラリ・ビルディング(ボキャビル)と呼びます。
ボキャビルは、無理してやる必要はありません。読める本を読むだけでも語彙は自然に増えていきます。数年間もやっていれば、結構な語彙が身につくでしょう。本を楽しく読むことが何よりも大切です。やりたくないことはすべきでありません。でも、その数年間を数分の一に短縮したいとしたら、ボキャビルの出番です。
覚えた英単語が1.5万語程度に達すると、一般的な本や新聞が負荷なく読めるようになります。ボキャビルなしでそのレベルを達成するには5年や10年くらいの時間が必要になると思います。それを劇的に短縮する方法がボキャビルなのです。
ボキャビルの弱点として、たとえいったん覚えても忘れてしまうことが挙げられますが、多読と併用すると日常的に覚えた単語と触れ合うことになるので忘れることがありません。多読と暗記は対照的に見えますが、じつは相性がいいのです。
ボキャビルは、精読と並んで取扱注意の劇薬です。十分にモチベーションがある人以外、手を出してはいけません。ただし、楽しく取り組めたら劇的な効果があります。楽しいというよりも「苦しくない体験にする」というのが正しいかもしれません。
私はボキャビルをやる際、「これはズルいドーピング行為なんだ」と思ってコソコソやっていました。英語でいうギルティ・プレジャー(後ろめたいがやめられない物事)でした。単純な作業になりがちなボキャビルを楽しい習慣にするには、気の持ちようが大切です。
英単語は覚えようとしてはいけない
ボキャビルをやる決意をした人に、単語を暗記するコツを伝授します。
「覚えようとしないこと」
言いまちがいではありません。単語をあえて覚えようとしないことが重要なのです。
たとえば、resolution(決意)という単語を覚えたいとします。はじめて単語学習アプリがresolutionを提示してきて、意味を答えられなかったとします。あなたはどうしますか?
おそらく、正解を答えられずイライラします。そして、「resolution=決意だ、resolution=決意だ、resolution=決意だ」と何度も頭の中で唱えます。単語と意味のペアの脳内のつながりを強めようと念じます。ノートに書いて覚えようとするかもしれません。