「生まれて初めて居酒屋に来た」と喜ぶ患者も

たとえば、大学卒業後に約5年間にわたって引きこもっていた患者さんは、デイケアを始めたことで週1回は出てこられるようになりました。デイケアのメンバーと一緒に居酒屋に行って「生まれて初めて居酒屋に来た」などと楽しそうに過ごせるようになったのです。

デイケアのメンバーが多くなってくると、メンバー同士で麻雀やゲームをするグループが自主的に立ち上がるようになります。スタッフが働きかけなくても自主的にグループを立ち上げ、悩みを共有することで「困り感」を解消することができるということが、この15年間で分かってきました。

発達障害専門プログラムの流れ(晴和病院の例)(出所=『ここは、日本でいちばん患者が訪れる 大人の発達障害診療科』より)

デイケアなど、同じ立場にある仲間同士の支え合いを「ピアサポート」と呼びます。脳の機能障害自体は治りませんが、こうしたピアサポートを通じて、社会に参加できる人が増えてきている点においては、ある種の「治療」として機能していると考えています。

一方で、いわゆる「発達障害グレーゾーン」と呼ばれるような人にデイケアの様子を見せると、「私は参加しなくて大丈夫です」と答えるケースがほとんどです。ASDを抱える人にとっては癒しになっているのですが、そうではない人にとっては居心地の悪い場所に見えてしまうようです。