ガチの素人によるハラハラ感

具体的にはまず、素人の女子大生の起用である。この番組では、女子大生を「オールナイターズ」と名づけ、番組のMCやリポーターをやらせた。その数は数十名に及ぶ。いまだと女子大生といってもほとんどタレントのような場合が多いが、『オールナイトフジ』の女子大生にはガチの素人感があった。

たどたどしいのはもちろんだが、台本の漢字が読めなかったり、噛んだりするなどの失敗は日常茶飯事。だがそれが、彼女たちの素の面白さ、人間的魅力を引き出すことにもなった。

当然「大学生にもなって」という批判も巻き起こったが、一方でテレビ最大の魅力であるハラハラ感の源、ハプニングの宝庫にもなり、番組は評判を呼ぶようになった。

その中心にいたオールナイターズもアイドル的人気を獲得した。批判を逆手に取って『私たちはバカじゃない オールナイトフジで〜す』(1984年発売)という番組本を出版するなど話題づくりも巧みで、ほどなく「女子大生ブーム」が巻き起こる。メディアも盛んに書き立てた。

その波に乗って歌手デビューもした。全員で歌う曲もあったが、人気メンバーによるユニットも誕生した。

「恋をアンコール」(1984年発売)は、山崎美貴、松尾羽純、深谷智子による「おかわりシスターズ」のデビュー曲。番組の公開ライブで大勢のファンを前にこの曲を歌ったとき、松尾が感極まって叫んだ「みんな、大好き!」は後々までいじられることになった。そのライバル的存在として、バラエティ能力の高かった片岡聖子と井上明子による「おあずけシスターズ」などもレコードデビューを果たした。

彼女たちのなかには芸能界に進む人間もいたが、多くは学生時代の良い思い出と割り切って卒業とともに一般人に戻っていった。そのあたりがさらに、素人の魅力を感じさせた部分でもあった。

生放送ゆえのハプニング

「なんでもあり」によるハプニングは、芸能人でも生まれた。そのなかには、いまでも伝説として残るものも多い。

当時アイドル歌手だった松本伊代が、自分が出す『伊代の女子大生まるモテ講座』(1985年発売)という本の宣伝をしたことがあった。テレビではよくある光景だが、ここで松本伊代は「どんな内容?」と聞かれて「今日初めて見たので、まだ読んでないんですけど……」と答えてしまった。

芸能人の本にゴーストライターがいることは皆なんとなく知っていたが、それを事実として白日のもとにさらしてしまったわけである。ツッコまれた松本伊代が、切羽詰まって「いいじゃん!」と半ば開き直っていたところも逆に面白かった。