「考えまい」とするほど嫌な思考から逃れられない

不愉快なことばかりが頭に浮かんでしまうとき、私たちは、「もう、そういうことを考えないようにしなければ」と自分に言い聞かせようとします。

しかし、この作戦は、たいていうまくいきません。

「もう考えまい」とすればするほど、かえってその考えが頭に浮かんでしまうものなのです。

では、どうすればイヤな思考から逃れることができるのかというと、「考えまい」とするのではなく、何かひとつの対象を決めて、じーっとその対象を凝視するようにするのです。

ボールペンの先端でも、部屋の壁にかけてある時計でも、空に浮かぶ雲でも、何でもかまいません。

じーっと凝視をつづけていると、不思議なことに、ネガティブな思考が頭に浮かびにくくなります。何か他のことに集中していると、よけいなことを考えずにすむのですね。

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何か1点を凝視してみるとよい

カリフォルニア大学サンタバーバラ校のベンジャミン・ベアードは、79名の大学生を集めて、半分のグループには、「別れた恋人のことだけは考えないように」と伝えました。もし別れた恋人のことが少しでも頭に浮かんでしまったら、コンピュータのスペースバーを押すように、と指示しました。

残りの半分にも、「別れた恋人のことだけは考えないように」と伝えたのですが、コンピュータの画面の1点をずっと凝視してください、とも伝えました。1点を凝視しながら、それでも頭に別れた恋人のことが浮かんだら、スペースバーを押すことが求められたのです。

その結果、実験時間中にスペースバーを押した回数は、図表1のようになりました。

「考えない」ようにすると、1点を凝視するグループより、約2倍もたくさん考えてはいけないことが頭に浮かんでしまうことがよくわかるデータですね。

ネガティブな考えが頭に浮かんでしまうことでお悩みなら、何か1点を凝視してみるといいですよ。

禅の世界では、座禅中にいろいろとよけいなことを考えてしまう初学者には、禅師から「呼吸に集中するように」というアドバイスがなされるそうです。呼吸に集中するのも、1点を凝視するのと同じで、どちらも1つに注意を向けるということですから、呼吸に集中するのでもいいかもしれませんね。