※本稿は、大愚元勝『これでは、不幸まっしぐら 今すぐ変えたい30の思考・行動』(佼成出版社)の一部を再編集したものです。
「してもらってあたりまえ」と思っていないか
「夫が『ありがとう』という言葉を言ってくれないんです」
そんな相談を受けたことがあります。奥さんのやるせない思いが伝わってきました。
たとえば、本を読んでいる夫に対し、奥さんがコーヒーを淹れてそっと差し入れてあげたとする。このちょっとした気遣いに対し、「ありがとう」という言葉が返ってくれば、その場は非常に和やかになるのです。しかし、とくに意識もしていないのか、素直に感謝の言葉を口にすることができないのです。
感謝の気持ちを素直にあらわせないケースは、家族間のような気の置けない関係性、あるいは、上下関係がはっきりしている場合に多いようです。その背景には“してもらってあたりまえ”という思いがあるのだと思われます。
「店員こそお客に感謝を」は一見、正論だが…
時々議論になる話題があります。それは、「お客は店員にお礼を言うべきか」という問題です。「サービスの対価を払っているのだから、客が店員に『ありがとう』と言う必要はない」「いやいや、お金を払っているからといって、客と店員に立場の上下関係があるわけではない。してもらったことにお礼を言わないのはおかしい」「細かいことは気にしていないけど、自然と『ありがとう』と言ってしまう」など、さまざまな意見があがります。
こちらが何かをしてあげたから、何かを返してもらうのは当然である――このような考え方に立っているうちは、感謝の気持ちは生じなくなるでしょう。お客は対価を払っているから商品を受けとる権利があり、店員は商品を買ってくれたお客に感謝を伝える立場にある。
これは一見すると正論であり、間違ってはいないようにも思えます。もしかしたら、夫が感謝の言葉を伝えてくれないのは、「妻は夫に尽くして当然である」(現代では時代錯誤的な考えですが)と夫が思っているからかもしれません。
ですが、それが正しいかどうかは別として、私はそこには大きな問題があると思っています。