「ありがとう」は人間関係の潤滑油になる
さまざまな人やものとの関係性を生きる私たち人間にとって、「ありがとう」の言葉はコミュニケーションの潤滑油のようなものです。誰だって、人に親切にしたり、施してあげたりしたときには、感謝されたいという欲をもっています。
「してあげたのだから感謝してもらって当然だ」という態度をとることが、非常に横柄であることはご理解いただけると思いますが、せめて一言「ありがとう」と言ってもらえるだけで、気持ちが良い関係性を保つことができます。
反対に、潤滑油である感謝の言葉を伝えられない人は、周りとの関係性がギスギスしていくことになるでしょう。「あの人に協力しても、感謝されることなんてないからな」と、周囲に助けてもらえない人間になっていくのです。
最近は店員に横柄な態度をとる男性に不快感を覚える女性も多いようですが、「俺は客だぞ! 金を払っているんだから言うことを聞け」などと勘違いする男性の幼さ、度量の狭さが伝わるのでしょう。
これと同じく、会社などで部下や後輩が自分を助けてくれても、さして感謝の態度も示さないばかりか「別に頼んでない」「あたりまえのことだから」などと憎まれ口を叩こうものなら、頼りにされることもなくなっていきます。たった一言、「ありがとう」と言えないがために、信頼を失い、結果的に大きく損をすることになるのです。
感謝できる人間になるブッダの教え「知恩」
では、感謝できる人間になるにはどうしたらいいか。ヒントになる仏教語が「知恩」です。「恩を知る」と書きますが、この教えは感謝することの大切さを説いています。
恩という字は「因」と「心」の二つの字から成り立っています。つまり、「原因」となったものを洞察できる「心」をもつということです。そうして初めて、恩を感じることができるのです。
このような観点で物事を見ていくと、たとえ対価としてのお金を支払っているのが自分であったとしても、施してくれる相手がいなければ何かを享受できないことに気がつくことができます。そこまで想像力が働けば、「してもらってあたりまえだ」という傲慢な心ではなく、「していただいて有難い」という恩に変えていくことができるのです。