「プロフェッショナルなサービス」とはどんなものか。牧師の沼田和也さんは、紳士服店でジャケットの袖直しを頼んだところ、袖が短くなりすぎるというトラブルにあった。その際、教会に交換品を持参した店長の対応ぶりに、たいへん感銘を受けたという。どんな対応だったのか――。

※本稿は、沼田和也『街の牧師 祈りといのち』(晶文社)の一部を再編集したものです。

モデルにフィット スーツ
写真=iStock.com/SeventyFour
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ジャケットの袖直しを頼んだら…

ある紳士服店でジャケットを買った。そこは追加料金を払うと、肩のほうから詰めて袖丈をあわせてくれるサービスがある。手の甲まで隠れてしまうほど袖が長かったので、わたしはサイズ直しを頼んだ。ちょうどよい長さまで袖をまくりあげて測ってくれるのだが、生地が分厚いツイードのためまくりにくく、若い店員さんは苦労している様子だった。

数日後出来上がり自宅へ届けられたジャケットに胸躍らせて袖をとおす。あれ? 左手がとても短い。気のせいかと思い、脱いで着直す。なおさら手首が丸見えだ。これでは袖が短かすぎる。どうしよう。店に言うべきだろうか。迷いに迷った挙句、わたしはその店に連絡をとった。現品を持って来てくださいとの返事をもらい、持参すると、「できる限り袖を伸ばし直してみます」とのことであった。

後日、店長から電話があった。残念ながら袖を詰めた際に生地はぎりぎりまで切ってしまっており、違和感ないほど長く戻すためのよぶんは残っていなかったので、新しいジャケットに交換するという。それなりに高いものだったので、わたしは恐縮し「そんなもったいない! わたしのわがままですから」と詫びたのだが、店長は「だいじょうぶですよ。袖を詰め過ぎたほうも、べつに捨てるわけではありませんから」と気遣ってくれた。しかも店長はわたしの家、すなわち教会まで新しいジャケットを持って、採寸し直しに来てくれるという。