目的と目標がわかる「相手本位」の伝え方にする
③④⑤は素直な気持ちの中でも、個人的な感情の発散でもなければ、保身でもありません。
職場や他のメンバーに対する影響にまつわる、「相手本位」「仕事本位」の本音です。
次のように相手をフォローするのであれば、誰でも理解できて納得も得られます。
③「くり返し教えてあげられる余裕がなくて、申し訳なかったね。今回のことを活かして、ぜひ次回からはこの仕事を完璧に終わらせてね」
④「知っての通り、少人数で目標達成しなければならない状況だから、君にも大きな戦力になってほしい。他のメンバーの負担を少しでも減らして、みんなが活躍できるようにしたいんだ」
⑤「いいチームワークで最高の仕事をつくっていきたいんだ。まだまだ不慣れかもしれないけれど、もちろん君もその大切なメンバーのひとりだ。期待しているから、頼んだよ」
そして、こういうフォローも考えられるでしょう。
⑥「わからなければいつでも質問してね。そうじゃないと、君が困ることになるからね。そのかわりメモをしっかりとって、一回でマスターしてね」
少し照れくさくて、こそばゆい感じがしますか。
でもこの、③~⑥があなたの正直な気持ちであれば伝えるべきでしょう。
あなたが、
・何を感じているのか
・何を心配しているのか
・何を目指そうとしているのか
・相手をどのように見ているのか
これらを伝えない限りは、どれだけ怒鳴りつけても何の変化も期待できないでしょう。
しかもその内容は、仕事本位で公平で、相手を尊重していなければ納得は得られません。
しかし、このような会話をしたからといって、完全に問題が解決するわけではなく、そのあとも、何度でも話さなければならないこともあります。
“人育ての達人”と言われた、松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助は、こんなことを言っています。
「ええか、何回も何回も同じことを言うんやで。何回も何回もやで。何回も何回も同じことを言うんや……」
相手のDNAに刻み込むような気持ちを持って伝えるのです。
自分が傷つかずに「感情的な人」と接する方法
さて、次に問題になるのが、相手があなたに自分本位の感情的な言葉をぶつけてきたときにはどう対処するのかということです。
たとえば、
①「おい、いつまで1つの仕事にかかってるんだよ! ダラダラ仕事をするな」
②「このままの成績では、来期の君の居場所がここにはなくなるかもしれないと心配しているんだよ」
など、明らかにイライラの感情の発散や、「君のため」と言いながらも自己保身から発せられる言葉への対処方法を考えてみましょう。
このような攻撃や自己保身から出てくる言葉をまともに受けると誰でも傷つきます。
しかし、ここで腹を立てたり、落ち込んだりしてしまうと、「やっぱり自分はダメなんだ」という、私はOKではないというスタンスに陥ってしまいます。あるいは「あの人は自分本位なずるい人だ」という、相手はOKではないスタンスを固めてしまいます。
これらのOKではないというスタンスは、落ち込みと苛立ちという、いずれにしてもあなたを苦しめる結果になります。
そこで、こんな返事をしてみてはどうでしょうか。
①「テクニカルなトラブルで時間を要してしまいました。予定より遅れて申し訳ありません。最短で仕上げるように努力します」
②「ご心配いただきありがとうございます。来期の成果を達成できるように精一杯努めます。そこでなのですが、成果を上げられるようなトレーニングを受けさせていただけないでしょうか」
というように、詫びながらも言いたいことを主張するのです。あるいは、相手に感謝し自分の非を認めつつ、自分が成長するための援助を正当にお願いしてみることです。
これらの言動には、あなたと相手に対して「OKである」あるいは、「OKになるために」というスタンスが背景にありますから、落ち込みや苛立ちの感情からあなた自身を守ることができます。
それでも、「自分本位の言葉」をぶつけてくる人は後を絶ちませんが、「私はOKである」というスタンスを保ち言動することによって、相手に謝るにしても、感謝するにしても、また提案や自己主張をするにしても、あなたも相手も傷つけないコミュニケーションが可能になります。