本音で付き合える「いい空気」のつくり方

あなたが疲れない人間関係をつくっていくためには、相手が今どのような状態で、どのような心境なのかということを考えながら対応することもポイントとなります。これをすることで、コミュニケーションがうまくいき自分も楽になります。

たとえば、せっかちな人やいつも忙しく動き回っている人であれば、同じことをくり返し説明したくないはずですから、

・メモをとりながら話を聞く
・重要と感じたポイントは、相手の言った言葉を一部くり返して確認をとる

など、相手が安心し心地よく感じるであろう対応をとることです。これらはすなわち、相手に安心感を与えるということです。

相手本位の目で見て、よく観察していくと、不思議なことに、呼吸の速さ(リズム)が同調してきます。そして、話す速度、声のトーン、姿勢、仕草なども同調してきます。これらは、心理カウンセラーがカウンセリングで意識的に使う「ペーシング」という手法です。

人間は「同じもの、似たものに安心感を持ち、心を開く」という性質を持っています。短い時間で、安心感と信頼感をつくるには大変効果的な手法です。

相手本位の目で、相手や周囲を見てみると、違う世界が見えてくるかもしれません。そしてそれは苦手な相手の心を開くキー・ポイントでもあるのです。

攻撃的な人や苦手な人にこそ「あなたは優秀」というメッセージ

私たち人間は、誰でも本質的には「自尊心」を持った動物です。それは前に触れた自我と密接な関係があります。どんなに幼い子どもでもお年寄りでも、生きている限り自分のことが大切なのです。

自己嫌悪に陥り、「自分のことなんて大きらい!」と感じている人も、自分のことが大切なのです。「自分のことなんてどうでもいい」と思っているなら、自己嫌悪になりはしないからです。

また、自尊心を満たしてくれる人には好意的に接するものです。これを心理学で返報性の法則といい、好意を受けると、同じように返したくなるのです。

ですから、攻撃的な人や苦手な人にこそ「あなたが優秀で、すばらしいところを持っていることを私は知っていますよ」というメッセージをさりげなく伝えてみることです。感情的な人でも、自分のよさを認め尊重してくれる人には否定的な態度をとらないものです。

オフィスで手をたたくアジアのビジネスグループ
写真=iStock.com/itakayuki
※写真はイメージです

この、「自分は尊い存在である」という感覚が持てるからこそ、より一層成長しようという気持ちも生まれます。

これらのことは上司から部下、大人から子どもといった、上から下へのコミュニケーションだけではなく、下から上へのコミュニケーションにおいても大切です。

部下が上司の優れているところ、感謝しているところを伝える。子どもが親に対して感謝の気持ちを伝えるような場面です。

「そんな、ゴマをするようなことはできない」と思いますか?

「ゴマをする」とは、うまく接することによって自分にメリットのある人だけによく思われるような態度をとることです。年齢や立場に関係なく、誰にでも尊重する態度をとれば「ゴマをする」ことにはならないものです。